見もの・読みもの日記

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ハチと西郷さん/いぬ・犬・イヌ(松濤美術館)

2015-04-22 21:33:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
○渋谷区立松濤美術館 『人間の最も忠実なる友・人間の最も古くからの友 いぬ・犬・イヌ』展(2015年4月7日~5月24日)

 「人間の最良の友」と称され、最も人に親しまれてる動物、イヌにちなんだ作品を集めた展覧会。ちょうど名古屋市美術館では『いつだって猫展』(2015年4月29日~5月10日)を開催中だという。私は動物としては「イヌ派」だが、美術作品としては、猫のほうが面白いし、人気が集まるんじゃないかと思っていた。

 しかし犬展もなかなか面白かった。冒頭には犬形の埴輪が2件。なるほど、犬と日本人のつきあいは古墳時代に遡るのだな。一方、猫は、経典などの書物をネズミから守るため、中国から輸入されたと解説にあった。それからしばらくは、犬のいる風俗画や人物画(近世~近代)が並ぶ。犬追物図屏風のような例外を除いて、犬は添え物。狩野芳崖の『毛利鏻姫(れいひめ)像』は以前、府中美術館で見たもので、嬉しかった。赤い着物のお姫様に横抱きにされた狆(襟巻に巻かれている?)が、見る者に正面顔を向けている。森田曠平の『渡来図』は、渦巻き状に尾を巻いた洋犬が南蛮人の足元に見える。

 可愛い仔犬を、脇役ではなく主題とした絵画も。宗達、応挙。やっぱり私は蘆雪の仔犬が好きだ。『降雪狗児図』(阪急文化財団)は、日本画にはめずらしい厚塗り感のある色彩。黒っぽい背景(わずかに雪がちらつく)に、ふかふかの白い仔犬(少しピンクがかって見える)が座っている。その前には、背中を向けた黒犬(背中と足と尻尾の先が白い)。蘆雪独特の、斜めに姿勢を崩した座り方だ。なんだか、絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」を思い出す。そして、白犬の表情の優しさは、あの名作絵本以上に微笑ましい。この絵が見られて、よかった!(4/26まで)

 上の階の第二展示室は、さらに「犬」を大きく描いた絵画・彫刻が揃っていて、ちょっと笑ってしまった。江戸時代に洋犬を描いた作品ってこんなに多いのか。パンダ並みの珍獣だったんだろうなあ。奥の小部屋では「有名なイヌたち」の小特集。そうか、渋谷といえばハチ公だから松濤美術館で犬展を企画したのか、ということにようやく気づく。ハチ公は美術館のすぐ近くに住んでいたそうだ。それから、犬を連れた西郷隆盛の肖像もいくつかあった。巧いと思えないが、色彩鮮やかで不思議な魅力のある作品は、床次正精の作品だった。軍服姿の西郷の前に黒っぽい犬が座っている。ほかの西郷の肖像2点は白と黒の二匹の犬を連れていた。

 質素な生活を旨としたを西郷が、犬にだけは目がなかったこと、愛犬の名前が「ツン」であったことは、この展覧会の図録で読んだので、書き留めておこう。
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