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見もの・読みもの日記

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革新の400年/狩野派-400年の栄華(栃木県立博物館)

2009-11-18 23:49:14 | 行ったもの(美術館・見仏)
栃木県立博物館 平成21年度秋季企画展『狩野派-400年の栄華-』(2009年10月10日~11月23日)

 室町時代後期から明治時代の初めまで、400年に渡って日本の画壇を制覇し続けた専門絵師集団、狩野派に焦点を当てる展覧会。没個性、粉本主義と貶められてきたが、近年、丁寧な見直しが行われているのは、ありがたいことだと思う。

 本展は、時代順に「狩野派誕生」(16世紀)→「探幽の登場」(17世紀)→「江戸の狩野派」(18世紀)→「そして近代へ」(19世紀)の4つのセクションを設け、同派の展開を紹介。入口付近に置かれた「狩野派略系図」のコピーが役に立つ(似たような名前が多くて、覚えられないんだよねー)。

 狩野派初代・正信の『観瀑図』の解説には、濃密、劇的、粘りのある筆法に対して「前代までの繊細さとは全く異なる画風」「まさに狩野派の画壇への登場を印象づける作品」とある。そう言われても「前代」の画風って、よく分からないなあ、と思ったが、会場でいえば、伝・周文筆『周茂叔愛蓮図』が典型例になるのだろうか。なるほど、お粥と背脂豚骨ラーメンくらい違う…。

 2代目・元信(古法眼)の画業は多彩だ。紙本着色『花鳥図屏風』の愛らしさは、典型的な元信スタイル。『富士曼荼羅図』は、全体は宗教画として、細部は風俗画として、どちらも完成度が高い。

 永徳は1点だけだったけど、個人蔵の『洛外名所遊楽図屏風』(2006年発見→asahi.com:2006/9/13)が出ていた。図録で見ると、確かに人物の描き方が上杉本『洛中洛外図屏風』に似ていると思う。ただし、これを現場で実感するには、拡大鏡が必携。

 探幽になると、一転して、上品で瀟洒、平明淡白。豚骨が魚介ダシの和風ラーメンに変わったくらいの大変化を起こす。狩野派は「400年の栄華」と言いながら、その頂点にいた絵師は、前代のスタイルを墨守していたわけではなく、常に新しいものを生み出していたところが凄い。私は尚信、常信も大好き。尚信筆、栃木県立博物館所蔵の『竜虎図屏風』は初見かな。雲に溶けかかったような龍、ハート型に肩を丸めた虎。すっかり気に入ってしまった。また見に来たいなあ。

 そして、幕末の怪しき絵師・狩野一信筆、増上寺蔵『五百羅漢図』の2幅。この展覧会、私はこれを見に来たと行っても過言ではないのだが、そのほかに、一信筆『源平合戦屏風』(大きい屏風だなあ~)にも惚れ惚れした。ストップモーションが効果的に使われていて、国芳の武者絵を思わせるところがある。板橋区立美術館所蔵だそうだが、ええ~見た記憶がない…。

 最後に、近代ものだが、狩野芳崖の『寿老人図』もよかった。雪舟の『梅下寿老図』(梅潜寿老図)に捧げられていることはすぐに分かった。どちらも不気味で艶っぽくて好きだ。

 それにしても、宇都宮、去年も来たなあ、と思ったら、『朝鮮王朝の絵画と日本』を見たのは栃木県立美術館のほうだった。今回は県立博物館。自然と文化についての展示を行う総合博物館なので、エントランスを入ると、樹木にしがみついたクマにも会える(笑)。広い公園の紅葉も、ちょうど見ごろ。
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