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見もの・読みもの日記

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事業仕分けの憂鬱/行政刷新会議ライブ中継&Twitter

2009-11-14 23:38:50 | 見たもの(Webサイト・TV)
行政刷新会議 事業仕分けワーキンググループ・ライブ中継

 このブログでは、あまり生臭い時事ネタは取り上げないことにしているのだが、その禁を破って言及したい。いま話題になっている国の「事業仕分け」のことだ。

 2010年度概算要求の無駄を洗い出すため、行政刷新会議の「事業仕分け」が11/11から行われている。対象となっているのは、各省庁が要求した事業から、行政刷新会議(※実際は財務省の意向が強いと言われている)が選定した447事業。これらに、国会議員や民間有識者から成る「仕分け人」の3つのワーキンググループが、予算縮減・地方移管・廃止等々の判定を下すのである。私は(いまの仕事に直接関係するため)初日から第3WG(文部科学省・農林水産省・防衛省)のネット中継に聴き入っている。

 まず最初に、この作業過程が、傍聴自由の上に、インターネットで完全中継されると聞いたときは驚いた。上杉隆氏のブログによれば、これを実現させたのは、古川元久内閣府副大臣であるらしい。日本の政治が、一気に30年くらい進歩したような英断であった。

 仕分けの始まる前日に、参議院議員・蓮舫氏の「つぶやき」をTwitterで発見した。「Twitter(ツイッター)」の説明は省く。私は、今年の夏頃、試みに登録してみたのだが、どうもこういう慌しいサービスは性格に合わない、と分かって、あまり使っていなかった。蓮舫氏も10/8が「初ツイッター」だから、まだこのメディアの怖さと可能性を、十分理解されてはいなかっただろう。このとき、私が知ったのは、 #shiwake1、#shiwake2、#shiwake3、というハッシュタグでワーキンググループ別の話題が追えることと、公式中継とは別のネット中継が計画されているらしい、ということだった。

 そして初日。私は、公式でない方のネット中継(ケツダンポトフ)に釘付けになった。これは、若い女性がひとりでウェブカメラを傍聴席に持ち込んで実現させたものだ。ニュース映像を見ると、会場には、マスコミ各社の取材陣も大勢集まっている。彼らは、それぞれ、価値のある場面を「選択」「編集」して、紙面の枠や番組の尺に合わせたニュースを仕立てるために来ているわけだが、それってどうなの、意味あるの?と思わざるを得なかった。

 さらにすごいことになった、と思ったのは3日目(11/13)で、この日は科学技術関係の予算が集中的に審議された。理化学研究所の次世代スパコン、大型放射光施設SPring-8に始まり、科研費(若手研究者支援)を始めとする競争的研究資金など。これらが、次々と厳しい査定にあって「来年度見送り」「縮減」等の結論が出ていく中で「#shiwake3」には、たぶん若手研究者を中心に、悲鳴、怒り、困惑など、さまざまなつぶやきが猛烈な勢いで流れ始めたのだ。

 「なんなのこれ?」「科研費も仕分け対象だったの?」みたいな戸惑いもあり、若者に投資をしない日本の姿を見て「心が折れた」という悲痛な声もあり、「科学者が説明責任を果たして来なかった」という自己反省の弁や「今からでも遅くない。行動を起こそう」というのもあった。「若手研究者支援と子育て支援が競合する状況はつくりたくない。どちらも大事」という冷静な声も。総じて、どのつぶやきも真面目で、無責任な暴言が入り込む余地がなく、匿名掲示板の「祭り」とは、また違ったコミュニティが出来ているように感じられた。

 3日目、最後のセクションでは「日本科学未来館」が取り上げられ、毛利衛館長が、明晰な弁論で仕分け人の追及を切り返した。実際には、それほど激しいバトルが演じられたわけではないのだが、一日中、官僚のぐだぐだ答弁を聞いていた身には、よほど爽快に感じられたらしい。しかし、仕分け人の標的は、はじめから日本科学未来館の運営を担っている科学技術広報財団にあったと思われ、毛利さんの活躍で未来館が廃止を免れた、というのは、買いかぶりだろう。

 それでも、赤字、赤字を連発する仕分け人と財務省に対して、冒頭から「高校、大学の経営で赤字と言いますか?この認識自体が官僚的発想だ」ときっぱり対決姿勢を示し、短い時間で仕分け人にデータを呑み込ませるため、棒グラフのフリップまで用意してきた周到さには、本当に頭が下がった(あれを即座に学習して、来週から真似する官僚はいるかな?)。宇宙飛行士の「条件」のひとつに、「自己の体験を活き活きと伝える豊かな表現力」があるそうだが(JAXA)、このときほど、それを実感したことはなかった。

 その後、この件については「まとめサイト」が作られ、中継録音ファイルもネット上に置かれている(私もリアルタイムに眺めていたのはTwitterだけで、中継音声は録音で聞いた)。また、蓮舫氏からは「仕分け人という立場もあり全ての方々に返信を出来ませんが、#shiwake3への声を読んでいます。多くの方々のご意見を真摯に受け止めます。」というコメントが流れた。仕分け作業の始まる前、「事業仕分け時のTwitterの可能性を話す予定です!こんな可能性のあるメディアって素直にすごいと思う。」とつぶやいていた蓮舫氏だが、そのとんでもない可能性を引き出す役回りを負ってしまったように思う。ちょっと同情する。

 同様に民主党も、「事業仕分け」とその完全公開が何を引き起こすかは、十分に予測できていなかったんじゃないだろうか。いや、そもそも無駄廃止=市場原理主義の徹底が、何を引き起こすかも…。でも、研究者が政治という現実を意識するようになることは、悪い変化ではない。それから、官僚も、自分の担当する予算要求が通るか通らないかに、多くの人の生き死に(大げさ?)と、日本の未来がかかっているということに目を開いてほしい。「#shiwake3」に流れたコメントは、蓮舫議員だけでなく、文部科学省の官僚たちにも、ぜひ噛みしめて読んでほしいと思う。本当に志のある官僚なら、自分のふがいなさに泣けるよなあ。

※事業仕分けWS3 まとめウィキ FrontPage
http://mercury.dbcls.jp/w/

※子子子子子子(ねこのここねこ):11/13の中継録音ファイルあり
http://d.hatena.ne.jp/riocampos/20091113

※行政刷新会議の仕分け対象447事業一覧:Yomiuri Online
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091109-OYT1T01053.htm
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