○神戸市立博物館 第100回特別展『コレクションの精華-つたえたい美と歴史』
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/museum/main.html
先々週の金曜日(7/25)、早めに仕事が退けると分かったので、その日のうちに神戸まで行ってしまうことにした。旅の目的はただひとつ、今年の3月に初めて訪ねて、すっかり気に入ってしまった(訪問記前編・後編)神戸市立博物館の館蔵コレクション展である。いや、すごかった。冒頭から『小敦盛絵巻』『源平合戦図屏風』などの名品が続く。銅鐸・銅戈などの考古・歴史資料にも興味がないわけではない。しかし、全て割愛して、古地図のセクションに進もう。
正面に掲げられたのは、中国・康熙時代の『坤輿全圖』。8幅(8軸)に分割されており、中央の6幅が世界地図になっている。地図の左隅に「治理暦法極西南懐仁立法」と、イエズズ会士、南懐仁(F.フェルビースト)の名前が見え、地図を囲む14のコラムには「地震」「海之潮汐」「風」「雨雲」など、天文気象の解説が書かれている。木版印刷に彩色したものだというが、驚くほど色鮮やか。世界的にも伝存例は少ないそうだが、何部くらい作られたのかなあ。一方、『地球分双卯酉五帯之図』は、地球儀を開いたように、紡錘形の紙を並べためずらしい世界地図。日本の絵画には滅多に使われないような、ピンクやオレンジのパステルカラーが美しい。
『世界四大洲図・四十八カ国図屏風』は六曲一双屏風(江戸、18世紀後半~19世紀前半)。「ヨーロッパ」「南北アメリカ」「アフリカ」「アジア」を描いた4点の地図が、三曲(っていうのか?)の中央に1点ずつ描き込まれており、その周りを、諸国の男女人物図や風景図が囲む。色鮮やかで美しいが、ふーんと思って通り過ぎるところだった。
その斜め隣りの壁に掛けられていたのが、17世紀末、アムステルダムの地図メーカー、G.ファルクが刊行した「アジア図」と「ヨーロッパ図」。ちょっと待って。よ~く見ると、さっきの屏風に描かれていた「アジア図」「ヨーロッパ図」に瓜二つではないか。地図の周囲に描かれた、装飾的な人物画・風俗画まで、よく似せている。でも、原図の出版者表記「Gedruckt by Gerard Valk」は、ちゃっかり抜いているところが可笑しい。あと、誰だか分からない肖像の下に「NEC PLURIBUS IMPAR」とあるのも消されているが、調べてみたら、これってルイ14世の座右の銘「並び立つ者なし」(ラテン語)だそうだ。確かに、この地図が出版されたのはルイ14世の時代だが、当時、フランスとオランダの関係は、けっこう込み入っている。
原図は、もちろんオランダ語(だよね?)で地名が表記されているが、屏風は、その主なものを漢字表記に直している(伊須波牟野=イスパニヤ、応須天理=オーストリーなど)。誰か、オランダ語の分かる者がかかわっていたのだろうか。これ、見比べ始めると、時間を忘れるほど面白いのだが、展示会場では、両者の関係に気づいている人が意外と少なかったように思う。もったいない!
ファルク地図は、四大洲に世界図を加えて5枚1組で販売され、オランダの家庭では、壁に掛けて使われたそうだ。解説の「フェルメールの絵にあるように」という一節が気になって、あとで調べてみたら本当だった(→参考:個人ブログ『地図豆』)。興味ないと思っていたが、上野で始まったフェルメール展、見てくるかな。
『大輿地球儀』にもびっくりした。幕末に、常陸の地理学者・沼尻墨僊が作った紙風船のような地球儀である。以上、まだ展示の半分にも至っていないのだが、続きは別稿で。
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/museum/main.html
先々週の金曜日(7/25)、早めに仕事が退けると分かったので、その日のうちに神戸まで行ってしまうことにした。旅の目的はただひとつ、今年の3月に初めて訪ねて、すっかり気に入ってしまった(訪問記前編・後編)神戸市立博物館の館蔵コレクション展である。いや、すごかった。冒頭から『小敦盛絵巻』『源平合戦図屏風』などの名品が続く。銅鐸・銅戈などの考古・歴史資料にも興味がないわけではない。しかし、全て割愛して、古地図のセクションに進もう。
正面に掲げられたのは、中国・康熙時代の『坤輿全圖』。8幅(8軸)に分割されており、中央の6幅が世界地図になっている。地図の左隅に「治理暦法極西南懐仁立法」と、イエズズ会士、南懐仁(F.フェルビースト)の名前が見え、地図を囲む14のコラムには「地震」「海之潮汐」「風」「雨雲」など、天文気象の解説が書かれている。木版印刷に彩色したものだというが、驚くほど色鮮やか。世界的にも伝存例は少ないそうだが、何部くらい作られたのかなあ。一方、『地球分双卯酉五帯之図』は、地球儀を開いたように、紡錘形の紙を並べためずらしい世界地図。日本の絵画には滅多に使われないような、ピンクやオレンジのパステルカラーが美しい。
『世界四大洲図・四十八カ国図屏風』は六曲一双屏風(江戸、18世紀後半~19世紀前半)。「ヨーロッパ」「南北アメリカ」「アフリカ」「アジア」を描いた4点の地図が、三曲(っていうのか?)の中央に1点ずつ描き込まれており、その周りを、諸国の男女人物図や風景図が囲む。色鮮やかで美しいが、ふーんと思って通り過ぎるところだった。
その斜め隣りの壁に掛けられていたのが、17世紀末、アムステルダムの地図メーカー、G.ファルクが刊行した「アジア図」と「ヨーロッパ図」。ちょっと待って。よ~く見ると、さっきの屏風に描かれていた「アジア図」「ヨーロッパ図」に瓜二つではないか。地図の周囲に描かれた、装飾的な人物画・風俗画まで、よく似せている。でも、原図の出版者表記「Gedruckt by Gerard Valk」は、ちゃっかり抜いているところが可笑しい。あと、誰だか分からない肖像の下に「NEC PLURIBUS IMPAR」とあるのも消されているが、調べてみたら、これってルイ14世の座右の銘「並び立つ者なし」(ラテン語)だそうだ。確かに、この地図が出版されたのはルイ14世の時代だが、当時、フランスとオランダの関係は、けっこう込み入っている。
原図は、もちろんオランダ語(だよね?)で地名が表記されているが、屏風は、その主なものを漢字表記に直している(伊須波牟野=イスパニヤ、応須天理=オーストリーなど)。誰か、オランダ語の分かる者がかかわっていたのだろうか。これ、見比べ始めると、時間を忘れるほど面白いのだが、展示会場では、両者の関係に気づいている人が意外と少なかったように思う。もったいない!
ファルク地図は、四大洲に世界図を加えて5枚1組で販売され、オランダの家庭では、壁に掛けて使われたそうだ。解説の「フェルメールの絵にあるように」という一節が気になって、あとで調べてみたら本当だった(→参考:個人ブログ『地図豆』)。興味ないと思っていたが、上野で始まったフェルメール展、見てくるかな。
『大輿地球儀』にもびっくりした。幕末に、常陸の地理学者・沼尻墨僊が作った紙風船のような地球儀である。以上、まだ展示の半分にも至っていないのだが、続きは別稿で。