見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

NHK・北京オリンピック開会式を見る

2008-08-09 23:27:25 | 見たもの(Webサイト・TV)
○北京オリンピック開会式:NHK総合 8月8日(金)20:55~24:30

 オリンピックにワクワクしたのは小学生まで。成人してからは、ほとんど関心がない。たまに開会式の映像に出くわすと、へえー最近は派手になったんだなあ、と驚くくらいだった。けれども、ことが中国の話となると、ちょっと気になる。映画『HERO』『LOVERS』など(ストーリーはともかく)画面の美しさでは圧倒的な、張芸謀(チャン・イーモー)の演出だというし。昨夜は、すすんでテレビをつけて、開会式の中継を待った。

 いや、面白かったね。ほかの人はどう思ったか知らないが、私には濃厚な中国人テイストが感じられた。国際標準に媚びて、よそゆきの演目を作るのではなくて、自分たちの大好きなものを堂々と見せている、という感じである。洗練され、お金もかけているけれど、基本的には、中国企業のテレビCMとか、安上がりなカンフー娯楽映画とか、大きな都市の劇場で行われている、古典舞踊とミュージカルが合体した演芸ショー(中国人はこれが大好き)と全く同路線だと思った。人海戦術に加えて、ワイヤーアクションてんこ盛りだったし。「自分たちの好きなものは、世界中の人が好き」という、いわれのない自信が、中国らしい。歴史を重んじ、文字と文明を尊崇する一方で、ものすごく即物的に肉体派の一面もよく出ていたと思う。

 昨夜はNHKの中継を見ていたのだが、もうちょっと中国の歴史を知っているゲストを立てたほうがよかったんじゃないか? 鄭和(明代、1371-1434)を「伝説の人物」とか称するので、ハラハラしたぞ。開会式の冒頭、打楽器(缶)の奏者が唱えていたのは、論語の「有朋自遠方来,不亦楽乎」である、というのは、放送中で紹介されていたが、そのあと、孔子の弟子たちのパフォーマンスは「論語の一節を唱えています」という紹介だけで、何を言ってるのか聞き取れなかった。さっき、中国語のサイトを見たら「四海之内、皆兄弟也」だそうだ。なるほどね。

 ちなみに、冒頭の打楽器は、簡体字表記では「缶」になるが、正式には「缻」(素焼きの器。瓦盆)。あまり高貴な楽器ではなくて、『史記』「廉頗・藺相如列伝」で、藺相如が秦の昭襄王に無理強いで叩かせたもののことらしい。おお、そうであったか。

 中国語の公式サイトを見ると、正式の開会式の前に、獅子舞や龍舞(蛇おどり)など、伝統的な表演も行われたらしい(観客席、ガラガラだけど)。また、「開幕式誕生記」によれば、テーマとなった中国四大発明のうち「火薬」に関連して、戦争の惨禍を伝える「ゲルニカ」を黒火薬で描き(!)これが焼き尽くされたあと、緑の大地に変わる、という演出案があったが、悲惨な記憶を呼び覚ます点と、演員の安全が危ぶまれる点から、最終的に取りやめになったという。

 正直にいうと、私がいちばん心を動かされたのは、人民解放軍兵士による中国国旗の掲揚だった。ああいうの、日本では滅多に見ないからなあ。規律ある動作ってカッコいいものだ、と素直に思った。

■第29届奥林匹克運動会(北京オリンピック公式サイト:中国語)>開閉幕式
http://www.beijing2008.cn/ceremonies/
コメント
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