見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

行ったもの、あれこれ

2008-08-14 21:22:04 | 行ったもの(美術館・見仏)
 こちらも、最近の訪問先をまとめてお蔵出し。

■大阪市立東洋陶磁美術館 受贈記念特別展『中国工芸の精華 沖正一郎コレクション-鼻煙壺(びえんこ)1000展』
http://www.moco.or.jp/jp/index_f.html

 初訪問。先月末、神戸市立博物館の帰りに寄った。実は、ずいぶん昔、建物の前まで来たことがある。新大阪かどこかの駅でタクシーに乗って「大阪市立美術館へ」とお願いしたら、この東洋陶磁美術館の前で降ろされてしまったのだ。間違いに気づいて、慌ててタクシーを拾いなおした。そのとき、へえー大阪には陶磁器専門の市立美術館があるんだ、と知った。同館の存在を決定的に印象づけたのは、昨年、三井記美術館で行われた『美の求道者 安宅英一の眼』展である。これは、ぜひとも行ってみなくてはなるまい、と思って、半年間の休館(2007年10月~2008年3月)が開けるのを、今か今かと待っていた。

 この夏は、特別展『鼻煙壺1000』を開催中。鼻煙壺とは、嗅ぎタバコを入れるための小さな容器である。いま、中国の土産物店でよく見るのは、美人画や山水画を描いたガラス製が主流だが、磁器(紛彩)、玉(ぎょく)、鼈甲、瑪瑙、水晶、金属など、実にさまざまな素材が使われていることを知った。個人的に好きなのは、色ガラス。「李鴻章(大人)清玩」と刻んだものを何点か見たが、来歴なのか? 何かの様式の謂いなのだろうか? 平常展の充実も期待どおり。『美の求道者』展で、いちいち衝撃を受けていた、韓国陶磁・中国陶磁の名品が、日常の顔で並んでいるのは、恐ろしいほどの贅沢である。ついでに隣りの大阪府立中之島図書館を、地元民のような顔でのぞいて帰る。

■江戸東京博物館 特別展『北京故宮 書の名宝展』
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/

 「ああ、すごい、すごい。」のキャッチコピーに偽りはない。唐の欧陽詢、顔真卿、王羲之に始まり、宋の蘇軾、黄庭堅、米芾って、ほとんど書道史の教科書である。王羲之『蘭亭序』(八柱第三本)、黄庭堅『草書諸上座帖』は、惜しげもなく全面的にご開帳。八割方は明清ものだが、悪くない。永楽帝が「わが朝の王羲之」と呼んだという沈度もいいねえ。さりげなく朱元璋(明の太祖)の書(兵馬の数を問う勅状)があったりもする。清代は、歴史上おなじみの皇帝や廷臣の書が多く、そのひとが間近にいるような懐かしさを感じる。私は康有為の癖のある字も好きだ(去年、江南のある寺院で扁額を見た)。いちばん可笑しかったのは、朱耷(しゅとう)という人の書を見て、あ、八大山人の書に似ているっ、と思ったら、まさに八大山人そのひとだった。力の抜けた独特の書体で、なんと『蘭亭序』を書いているのに、思わず頬がゆるんでしまった。私は王羲之の真筆(存在しないけど)より、こっちのほうが欲しい。

 会場の外の大画面モニタでは、アニメの王羲之先生が『蘭亭序』の見どころを易しく解説している。会場を出てからこれを見ると、あっそこは見逃した、と悔しく思うので、入場前に見るのがおすすめ。なお、Wikipedia「八大山人」のリンクから、大好きな書画集『安晩帖』が全て見られることを発見。うれしい!

■日本民藝館 特別展『陶匠・濱田庄司-没後30年記念』
http://www.mingeikan.or.jp/

 柳宗悦、河井寛次郎とともに、民藝運動を興した陶匠・濱田庄司の代表作約150点を紹介する展示会。私は、濱田庄司の使う緑色が好きだ。赤絵や銹絵に、ちょろりと足された緑色も好きだし、全体を緑でまとめた器もいい。いちばん有名なのは、黒釉でバッテンを描いたような大皿だろう。今回も、特別室のいちばん奥に、王様があたりを睥睨するように鎮座していた。重厚な木製キャビネットは玉座のようだった(これ、緑釉だと思っていたら『青釉黒流描大鉢』というのね)。『白釉青流描角鉢』も涼しげでいい。

 このほか、「日本の絵画」は「馬」を小特集していて面白い。別の部屋は、めずらしく「外邦工芸」を特集していて、英国のスリップウェアやオランダのデルフト・タイル、ドイツの鬚徳利などが見られる。大平雅巳さんの『カラー版 西洋陶磁入門』(岩波新書、2008)を思い出した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする