○調布市文化会館たづくり 平和の礎展2008『着物柄にみる戦争』
http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1215226230522/index.html
日曜の朝、ブログの管理画面を開けて、びっくりした。『図説 着物柄にみる戦争』の著者である乾淑子氏から、展覧会のお知らせコメントをいただいていたのである。期間は、8月18日(月)まで。これはもう、今日、行ってしまうしかないだろうと思って、調布まで出かけた。さほど大きい会場ではなかったが、密度濃く並べられた品数は約130点とのこと。2007年に関西で行われた展覧会が、多くても40点程度の出品だったのに比べると、かなり大規模な展覧会である。
戦争柄は、重厚長大な国粋主義とは結びつかない。むしろ、明るく軽やかな童心に満ちている。技術の進歩によって、精巧な文様も大量生産が可能になったことを受け、しばしば取り入れられたのが、「愛国行進曲」「軍艦行進曲」などの歌詞や楽譜のプリントだ。五線紙の楽譜って、たぶん最先端のメディアだったのだろうな。「MANSHU JIHEN(満州事変)」「BAKUDAN SANYUSHI(爆弾三勇士)」などローマ字表記も、のんきなほど頻出する。
最新の科学兵器(ラッパのお化けみたいな聴音器)あり、有名人・有名犬(金鵄勲章をもらった軍犬・利根)あり。折々の事件をモチーフにした中には、国際連盟脱退柄(MATSUOKA YOSUKE=松岡洋右の名前入り)なんて、とんでもないのもある。実に混沌としたありさまは、現代のTシャツやトレーナー文化と変わらない。
昨年、前述の書籍を手に取ったときは、千変万化するプリント柄の、子供向け着物がいちばん印象的だったが、あらたに会場で目をひいたのが「羽裏(羽織の裏)」である。中には、中国の領土を侵食する日本軍を戯画的に描いたものもある。広義には「戦争柄」だろうけれど、こんな反政府的な図柄を着ていて大丈夫だったんだろうか。技法的には、基本図を織り出した上に、細部を肉筆で描き加えている。私は和服のことは全く分からないが、羽織の裏(羽裏)は、持ち主の趣味や関心の表明になっていたらしい。先週まで京都で『羽裏:近代日本の雄弁なメディア』展というのをやっていたことを知った。うわー見たかったな、これ。
このほか、菊の御紋と君が代の歌詞を散らした緋色の襦袢は、花嫁か舞妓のものかという。不謹慎と叱られなかったのかなあ、と怪しむ。ためいきの出るほど明るくポップな提灯行列柄の羽裏などもあって、なんだか戦争って楽しそうだなあ、と思えてくる。「平和の礎展」には不似合いな感想だけど、戦争末期の数年を除いては、どんなときも人々は生活を楽しんでいたのではないかしら。
会場案内の方と立ち話をして、最近『戦争のある暮らし』という新著を出されたことを知った。私の好きな武田雅哉さんも寄稿されているらしい。さっそく、大きい本屋で探さなくちゃ。
※参考:『着物文様としての戦争イメージ』データベース
http://inui-zemi.xrea.bz/
いつの間にか、データベースが公開されていた。ありがたいが、もうちょっと拡大画像が欲しいところ。
http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1215226230522/index.html
日曜の朝、ブログの管理画面を開けて、びっくりした。『図説 着物柄にみる戦争』の著者である乾淑子氏から、展覧会のお知らせコメントをいただいていたのである。期間は、8月18日(月)まで。これはもう、今日、行ってしまうしかないだろうと思って、調布まで出かけた。さほど大きい会場ではなかったが、密度濃く並べられた品数は約130点とのこと。2007年に関西で行われた展覧会が、多くても40点程度の出品だったのに比べると、かなり大規模な展覧会である。
戦争柄は、重厚長大な国粋主義とは結びつかない。むしろ、明るく軽やかな童心に満ちている。技術の進歩によって、精巧な文様も大量生産が可能になったことを受け、しばしば取り入れられたのが、「愛国行進曲」「軍艦行進曲」などの歌詞や楽譜のプリントだ。五線紙の楽譜って、たぶん最先端のメディアだったのだろうな。「MANSHU JIHEN(満州事変)」「BAKUDAN SANYUSHI(爆弾三勇士)」などローマ字表記も、のんきなほど頻出する。
最新の科学兵器(ラッパのお化けみたいな聴音器)あり、有名人・有名犬(金鵄勲章をもらった軍犬・利根)あり。折々の事件をモチーフにした中には、国際連盟脱退柄(MATSUOKA YOSUKE=松岡洋右の名前入り)なんて、とんでもないのもある。実に混沌としたありさまは、現代のTシャツやトレーナー文化と変わらない。
昨年、前述の書籍を手に取ったときは、千変万化するプリント柄の、子供向け着物がいちばん印象的だったが、あらたに会場で目をひいたのが「羽裏(羽織の裏)」である。中には、中国の領土を侵食する日本軍を戯画的に描いたものもある。広義には「戦争柄」だろうけれど、こんな反政府的な図柄を着ていて大丈夫だったんだろうか。技法的には、基本図を織り出した上に、細部を肉筆で描き加えている。私は和服のことは全く分からないが、羽織の裏(羽裏)は、持ち主の趣味や関心の表明になっていたらしい。先週まで京都で『羽裏:近代日本の雄弁なメディア』展というのをやっていたことを知った。うわー見たかったな、これ。
このほか、菊の御紋と君が代の歌詞を散らした緋色の襦袢は、花嫁か舞妓のものかという。不謹慎と叱られなかったのかなあ、と怪しむ。ためいきの出るほど明るくポップな提灯行列柄の羽裏などもあって、なんだか戦争って楽しそうだなあ、と思えてくる。「平和の礎展」には不似合いな感想だけど、戦争末期の数年を除いては、どんなときも人々は生活を楽しんでいたのではないかしら。
会場案内の方と立ち話をして、最近『戦争のある暮らし』という新著を出されたことを知った。私の好きな武田雅哉さんも寄稿されているらしい。さっそく、大きい本屋で探さなくちゃ。
※参考:『着物文様としての戦争イメージ』データベース
http://inui-zemi.xrea.bz/
いつの間にか、データベースが公開されていた。ありがたいが、もうちょっと拡大画像が欲しいところ。