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見もの・読みもの日記

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右翼?左翼?/失敗の愛国心(鈴木邦男)

2008-07-03 23:41:06 | 読んだもの(書籍)
○鈴木邦男『失敗の愛国心』(よりみちパン!セ) 理論社 2008.3

 刺激的な話題を、次々と世に問う「よりみちパン!セ」シリーズ。本書のテーマは「愛国心」だ。著者は「日本のためによかれと思い、四十年間『右翼』をやってきました」という鈴木邦男である。私がはじめて著者の名前を知ったのは、90年代の初め、雑誌「SPA!」に連載されていたコラム「夕刻のコペルニクス」だったと思う。しかし、「なんだ、右翼か!」と思って、ほとんど中味は読まなかった。当時は、左翼の価値が今ほど下落していなかった分、右翼なんてバカの代名詞みたいに思っていたのである。

 著者・鈴木邦男は、1943年生まれ。1960年、浅沼稲次郎・社会党委員長の刺殺事件をテレビで目撃し、犯人の右翼少年が、自分と同じ17歳であったことに大きな衝撃を受ける。高校退学、1年遅れて早稲田大学に進学。授業料値上げをめぐるストライキに反対して、左翼学生と闘う。69年、安田講堂の攻防戦。学生運動の終息。70年に就職。同じ年、三島由紀夫と森田必勝の自決。森田を右翼学生運動に誘ったのは「僕ら」だったと著者はいう。そのことに「やましさ」を感じるメンバーが集まり、「一水会」が生まれる。最初はサラリーマンの勉強会だったが、次第に過激な活動に傾斜していく。

 本書には、1960~70年代の報道写真が、多数、収録されている。まさに浅沼委員長に向かって刃物を構える山口二矢の写真。有名な写真だ。60年安保に反対して、国会議事堂を取り囲んだ大群衆。アメリカ大統領秘書官の車に飛び乗り、角材を振るうデモ隊。あるいは、早大・大隈講堂を背景に、バリケードを取り除こうとする右派学生と、それを阻止する左派学生の争い、など。60~70年代の子供であった私でも、呆気にとられる光景が続く。今の中学生や高校生はどう思うだろう。日本にも、こんな剥き出しの暴力が存在していたことに、ショックを受けるだろうか。でも、真実は知っておいたほうがいい。

 山口二矢、森田必勝に続く著者の転機は、90年にやってきた。長崎市の本島市長襲撃をめぐる「朝生」で、著者以外の右翼の活動家は全員「テロを支持する」と言い、著者だけが「支持しない」と言った。右翼仲間からは批判されたが、著者は、この頃から、テロや非合法活動を棄て、考えの違う人たちとも、積極的に対話を持つようになる。

 その結果、現在の著者の立場は、非常に「ノーマル」である。愛国心を持ったがために凶暴になるくらいなら、ふつうに優しく生きているほうがいい、とか、国家も個人も失敗したらあやまろう、謙虚であろう、とか、とても共感できるけれど、鈴木さん、これって右翼?と首をひねりたくなる。なんだか、微笑ましいオジサンだな。右翼と左翼って、つきつめていくと合一するケースがあるらしい、ということを、最近、感じている。日本の右翼について、もう少し勉強してみたい。
コメント (2)
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