見もの・読みもの日記

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仏像ファン感激必至/六波羅蜜寺の仏像(東博)

2008-07-22 23:54:47 | 行ったもの(美術館・見仏)
■東京国立博物館・本館11室 特集陳列『六波羅蜜寺の仏像

 本館11室には、ふだん、館蔵品の仏像彫刻が展示されている。多少の展示替えはあるが、いわば登録選手団の中から、先発メンバーをやりくりするようなもので、この数年来、大きな変化を感じたことがない。それが、今回は、一室まるごと六波羅蜜寺から招来した仏像群に入れ替わってしまった。すごい。私の知る限り、初めての試みだと思う。

 六波羅蜜寺へは、もちろん何度も行っている。12年に1度、辰年にご開帳のご本尊、秘仏・十一面観音も2000年に拝観しているし、昨年の暮れは、念願だった空也踊躍念仏厳修(おどり念仏)を見てきた。いつ行っても素晴らしいのは、宝物館に収められた平安・鎌倉の彫刻群だ。余談ながら、東寺→三十三間堂→六波羅蜜寺というのが、私の東山見仏ゴールデンコースである。

 さて、会場入口で最初に相対するのは、平清盛像と伝える僧形坐像。鎌倉肖像彫刻の逸品である。これ、宝物館で見ると、うつむき加減の玉眼に凄みがあるのだが、今回の会場では、スポットライトの関係で、目や口の輪郭の丸みが強調され、笑っているように見える。印象の違いにびっくり。横から見ると、唇の厚さや下顎の長さが、『公家列影図』に描かれた清盛像に似ていなくもない? あと、胸のはだけかたがワイルドで、やっぱり武人だなあ、という感じがする。

 チラシやポスターにも使われている地蔵菩薩立像(平安時代)は、夢見るような面持ちが美しい。「軟派」の地蔵菩薩の代表格で、私の大好きな仏像である。繊細な唐草文の光背も、王朝貴族の美意識にふさわしい。解説パネルの拡大写真によって、華麗な彩色・截金を偲ぶこともできる。今昔物語は定朝作と伝えるが、もう少し早い時代の様式だそうだ。ちなみに同寺には、男ぶりのいい、運慶作の「硬派」な地蔵菩薩坐像も伝わるが、これは『対決』展に出品中。

 このほか、おおらかな四天王像(持国天・増長天)も好きだし、江戸の奪衣婆坐像もかわいい。伝運慶坐像・伝湛慶坐像は、やっぱり側面に回りこんでも造形に狂いがないと分かって感心した(頭の形がきれいなのは、写実なのか、理想化なのか?)。ところで、有名な空也上人像(口から六体の阿弥陀仏を吐き出す)はパネルに写真だけが掲げられ、「この像は六波羅蜜寺の象徴的な存在であるため、出品がかないませんでした」とある。当然とは言いながら、担当者の残念がる本音が現れているようで、微笑ましかった。

■東京国立博物館・本館12室 特集陳列『二体の大日如来像と運慶様(うんけいよう)の彫刻

 隣室に進んだら、ここもふだん(金工が主)と展示内容が違うので、うろたえてしまった。この夏は、2室続けて仏像の特集陳列を組んでいる。これがまたすごい! 伝浄瑠璃寺伝来の十二神将立像(巳神)は、小さいながらド迫力。足元に銀紙(アルミホイル?)をかぶせたミニパネルを置いて、反射光で玉眼と鎧の金箔の名残りを際立たせている工夫がいい。「二体の大日如来像」というのは、真如苑の大日如来像(先頃、ニューヨークのオークションで14億円で落札されたもの)と、栃木・光得寺の大日如来像である。両者を並べて見ると、実に細部まで相似形であることがよく分かる。

※参考:有鄰 No.439「新発見の大日如来像と運慶/山本勉」(2004/06/10)
http://www.yurindo.co.jp/yurin/back/yurin_439/yurin4.html

 2室あわせて20体ほどのミニ特集だが、東京では、ちょっと信じられないほどの高レベル。仏像好きには、たぶん、春の薬師寺展よりも、奈良博の法隆寺金堂展よりも、満足度が高いと思われる。どちらも9月21日まで、平常展料金で楽しめるのだから、嬉しい。また行ってみようと思う。
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