見もの・読みもの日記

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炎暑関西行(4):絵画を中心に(京博・常設展)

2008-07-17 23:45:11 | 行ったもの(美術館・見仏)
○京都国立博物館 平常展示

http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html

 京博の平常展示で、いつも一番楽しみにしているのは中国絵画。今期は、夏らしく、墨竹と山水でまとめている。展示室内にひんやりしたマイナスイオンが充満しているかのようだ。

 中でもいいなあ~と思ったのは、李唐の『山水図』2幅。私は、とりわけ左側、画面の9割以上を岩山が占めている秋景(または秋冬の景)が好きだ。刷毛で擦り付けたような岩肌の表現が面白い。樹木はちょびちょびと申し訳に生えている程度。智積院蔵『瀑布図』もいい。横長の画面に、一反木綿が寝そべったような、幅広の瀑布が描かれている。周りの黒い岩と対比的な、水の白さが、水流の多さと速さを物語る。高度感は全然違うんだけど、応挙の『大瀑布図』(相国寺蔵)を思い出してしまった。「水の変態を描く」のは中国絵画の伝統的な画題であるそうだ。馬遠の『十二水図』(北京故宮博物院蔵)を見てみたいなあ。

 清の余筆『岳陽大観』『天池石壁図』対幅は、大画面に広大な風景をあらわしつつ、湖面の波や木の葉、小さな船中人物などを丹念に描いている。品のある作だと思うけれど、中国のレストランや土産物屋で、いくらでも類例を見ることができそうだ。現代中国人の芸術的な嗜好って、清朝から連続しているのに対して、日本人は、宋代くらいで止まっているような気がする。

 日本絵画では、「数ある競馬図の中でも最も有名、かつ最も優れた作」と評される『賀茂競馬図屏風』が楽しい。よく見ると、なんだかあやしい振舞いに及ぶ人々も描かれている。江戸中期以降の祭礼図に比べると、「帯刀率」が異様に高い。女性と見まごう若侍も、ふんどし姿の下郎も、みんな刀を差している。画面中央には、大鎧で勢揃いした武将たちの後姿も描かれていて、まだ戦国時代からそう遠く隔たっていないことを感じさせる。騎手のポーズには、大倉集古館の『随身庭騎絵巻』に通ずるものがあるかも。

 狩野尚信の『禁苑郭公図屏風』は、滑空するカッコウが、くいっと頸を起こした一瞬の表情に味がある。5月に見た『李白観瀑図』に続き、注目。長沢蘆雪の『蓬莱山図』は、え、これが江戸絵画?と思うような新しい感覚に満ちてる。ロートレックの商業ポスターみたいな。
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