見もの・読みもの日記

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名品で学ぶ陶磁史/中国・朝鮮陶磁(戸栗美術館)

2007-07-19 23:41:20 | 行ったもの(美術館・見仏)
○戸栗美術館 『開館20周年記念 戸栗美術館名品展II-中国・朝鮮陶磁-』

 戸栗美術館といえば、伊万里・鍋島ゆかりの美術館だと思っていたが、中国・朝鮮陶磁のコレクションもすごいということが、よく分かった。

 中国陶磁は、仰韶文化(新石器時代)の彩陶に始まり、明清まで、順に時代を追っていく。古いものでは、無地の名品が印象に残った。元代の青磁(龍泉窯)では、細い頸と、なだらかに膨らんだ胴を持つ水瓶。これを「玉壺春」というのだそうだ(→大阪市立東洋陶磁美術館のサイトに画像あり。上から2番目)。白濁した青みの鈞窯(北宋)にも、かすかな卵色を感じる定窯の白磁(金~元)にも、同じような形があった。

 明代の嘉靖期から赤絵が登場する。万暦以前に焼かれた五彩を「古赤絵」と言い、明末~清初の「呉州赤絵」や「南京赤絵」に比べると、素朴で古拙な感じが日本人好みである。題材も、民話や唐子遊戯図、動物たちなど、にぎやかで楽しく可愛らしいものが多い。古赤絵は「青花を用いず」とあった。そうかー。この間、『青山二郎の眼』展で見た「呉州赤絵」は、赤と青の対比が印象的だった。そのへんが見分けどころなのかな。

 本展は、清代の作品は意外と少なく、明の赤絵と五彩に重点が置かれていた。たぶん近世までの日本人の趣味を正しく反映しているんじゃないかと思う。数少ない清代陶磁器の中では「桃花紅」の表現にシビれた。半透明の深紅の釉薬を通して、素地の風合いが透けているところが、桃の薄皮そっくりである(→こんな感じ)。

 朝鮮陶磁は、高麗青磁に始まる。9世紀前半から10世紀後半、中国の越州窯の技術を摂取して、生産が始まったそうだ。色味は、灰色から翡翠色まで、幅広い。李朝(14世紀~)に入ると、白磁、鉄絵、青花などが現れる。私はやはり無地の白磁の壺に惹かれた。張りのある丸みが色っぽい。ふと、先だって福岡市美術館で見た『色絵吉野山図茶壺』が思い浮かんだ。仁清の茶壺は、朝鮮白磁のかたちによく似ている。青花は、素地の確固たる白色に比べて、青の描線は薄くてたよりない。その結果、恐ろしい龍虎を描いても、妙に枯淡で涼しげである。

 ところで、比較的最近の新聞記事によれば、戸栗美術財団は、佐賀県の伊万里に新美術館建設を予定しているとのことだ。私は、以前、有田は観光したけど、伊万里は通り過ぎてしまったので、心残りに思っている。また行ってみたい。でも、この新美術館、地元では反対されているのか。残念だなあ。

■西日本新聞(2007/06/28):戸栗・新美術館建設-伊万里・有田焼伝統産業会館敷地に
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/saga/20070628/20070628_001.shtml
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