見もの・読みもの日記

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クール・ビューティ/中国・青磁のきらめき(静嘉堂文庫)

2007-07-09 23:41:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
○静嘉堂文庫美術館 『中国・青磁のきらめき-水色から青、緑色の世界-』

http://www.seikado.or.jp/menu.htm

 昨年の夏も出光美術館で『青磁の美-秘色の探求-』と題した展覧会があった。行きはしたものの、やっぱり地味だった。「焼きものは青磁に限る」なんていう人を見ると、大人だなあ、と思って憧れる。私は相変わらず、青花、赤絵、古九谷、仁清などの、子どもっぽい器の魅力から逃れられない性質なので。

 会場に入ると、本当に見渡す限り、青磁、青磁、青磁で、その潔さにちょっと微笑んでしまう。ただし、青磁の「青」は決して一様ではない。冒頭に登場するのは、最も歴史の古い越州窯。これは、ほとんど灰色である。それから、私の好きな、オリーブグリーンの耀州窯。「片切り彫り」で花文を彫り入れ、透明感のある濃緑の釉薬を掛ける。本展では『青磁刻花花鳥文枕』の1点しか見ることができないが、これが華麗な逸品。

 それから、南宋官窯(二重貫入と呼ばれる複雑なひび割れが見どころ)、明るい青みのまさった鈞窯(色の濃いものを天藍、薄いものを月白と呼び、紫紅色の斑文の取り合わせが好まれた)と続く。惜しむらくは汝窯がない。今年の初め、新装なった台湾故宮博物院は、汝窯特別展で大騒ぎだったらしい(行ってない)が、やっぱり滅多に見られるものではないのかな。

 本展で圧倒的な多数を占めるのは、龍泉窯である。室町時代に天龍寺船を通じてもたらされた、いわゆる天龍寺手は、黄味がかった緑の沈んだ調子(これを”青葱色”というらしい)のものが多く、砧青磁と呼ばれる端正な器形で代表される。しかし、実際には、色合いも形態も非常にバラエティに富む。「清香美酒」と四方に陽刻された甕は「酒」の一字が正面に向けてあって、こんな卑俗な青磁もあるのか、と思って笑ってしまった。明代の青磁は、庶民文化の活気を感じさせてよい。釉薬を薄くして、下地の文様やひび割れの透け具合を楽しむものもあるが、私はつるりと滑らかな風合いがいちばん好きだ。玉(ぎょく)か翡翠かと見まごう感じ。

 最後は清代の景徳鎮窯。雍正年間、南宋時代の龍泉窯を倣製(コピー)した作品が多数作られた。このへんになると「新しすぎて、つまらん」とか言い捨てて、素通りしていくおじさんもいた。確かに、清代の文物って、よくできた土産物みたいなつまらなさがある。でも、これはこれで、徹底的に古典に学び、古典を超えようという妥協の無さと実験精神が感じられて、私は好きだ。

 めずらしいところで「醤(ひしお)手」「猫掻き手」という器の種類も覚えました。
コメント
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