見もの・読みもの日記

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林檎花図(趙昌筆)/畠山記念館

2006-04-15 22:29:51 | 行ったもの(美術館・見仏)
○畠山記念館 春季展Ⅰ『かがやく漆-蒔絵の美』

http://www.ebara.co.jp/socialactivity/hatakeyama/index.html

 南宋絵画の名品『林檎花図』(国宝)が出ているという。先日、東京美術倶楽部の『美術商の百年』で見たばかりだが、また見たくなって出かけた。畠山記念館は初めてである。白金台の駅から、住宅街を抜けていくと、大名屋敷のような白壁のエントランスが現れる。本館までの長いアプローチの間に、大きな枝垂れ桜が見えた。盛りを過ぎてしまったのが惜しい。

 玄関にスリッパが用意してあるのにびっくりした。靴を脱いで上がる。展示室に入ると、軸物の展示ケースの前が畳敷きになっていて、またびっくりした。少し緊張して正座し、『林檎花図』の前ににじり寄る。なるほど、百年前の日本人は、こうして絵画を観賞したのだなあ。絹本は、年月が経つと画面が暗くなるものだが、この『林檎花図』は、厚みのある白が健在である。ボリュームのある中国美人を思わせて、お白粉の匂いが香り立つようだ。隣に酒井抱一の『桜に瑠璃鳥』を並べたところは、つかず離れず、付け句の演出のようで、なかなかいい。

 ほかには、いくつかの茶道具が印象に残った。『古銅龍耳花入(銘・九州)』は、黒光りする銅製の花入れ。明代の作というが、もっとモダンな印象である。青銅器の饕餮文(とうてつもん)に似た文様が基部に使われている。古代的な魔力を洗練の極に押し込めたような、魅力的な造形だ。ふぅ~ん、徳川家伝来の茶道具を「柳営御物(りゅうえいごもつ」というのか! 物騒な名前だと思ったら。

 『呉須吉祥文共蓋水指』(明代)もいい。丸胴の水指で、乳白色の地に、浴衣のように軽快で恬淡とした文様が、藍色に近い青で染め付けてある。それから、井戸茶碗『銘・信長』(李朝)も。ほんとに何の変哲もない、ただの茶碗なのだが、裾のすぼまり方の微かな不均衡に味がある。こういうのは、国境を超えて、制作者の功と目利きの功が相俟って、今日に伝わったものだと思うから、我々の祖先の鑑識眼が誇らしくて嬉しい(略奪された文化財と違って、制作国も返せとは言わないだろう)。

 さて肝腎の蒔絵は、後期(5/2~)のほうが名品が多そうである。光琳の『紅葵花蒔絵硯箱』見たいな~。また来てみるか。
コメント
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