見もの・読みもの日記

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京焼・写しの独創性/三井記念美術館

2006-04-25 22:02:23 | 行ったもの(美術館・見仏)
○三井記念美術館 企画展『京焼の名工~永楽保全・和全~』

http://www.mitsui-museum.jp/index2.html

 会場に入ると、最初に『雲龍土風炉(どぶろ)』という不思議な物体が目に飛び込んでくる。直径50センチくらいの黒光りするリングは、まるでイサム・ノグチの作品のようだが、実は土製の「風炉」で、お湯を沸かすための茶道具の一種である。京焼の名工、保全とその息子和全が生まれた永楽家は、この土風炉を作ることを家職にしていたという。

 保全は、19世紀前半(文化文政期)、中国東南部の陶磁器の写し物が流行った時代に生き、特に紀州徳川治宝の趣味に応じて(三井家は紀州徳川家の御用商人だった)、交趾写や呉須赤絵写などを手がけた。ちなみに「交趾」は、実際には中国東南部で作られた陶磁器であるそうだ。最大の特徴は濃い緑で、時に黄色、黒っぽい紫が加わる。古九谷の青手と同じ配色であるが、この大胆な配色を、抑制された優雅な造形の中に閉じ込めたのが、保全の交趾写の特徴であると思われる。赤地に金を配した金襴手にも、同じことが言える。

 今回の展覧会で見た保全の作品は、独創的で、高い芸術性を感じるものが多かった。ただ、正直なところ、私には、それが保全の独創性なのか、保全が手本にした作品の独創性なのかは、判断がつかない。上記のサイトの写真でいえば、『金襴手鳳凰文宝珠香合』とか『金襴手四ツ目結桐紋天目』とか、こんなのもお手本があったんでしょうかねえ。

 父の保全は、このほか、絵高麗(磁州窯)写、染付、青磁など、外国ものをよくしたが、息子の和全には「乾山写」「仁清写」「萩焼写」そして「応挙写」なんてのもある。コピーの容易でない時代、また、原本の流通や保存が困難であった時代、「写し」の意味は、現在とはずいぶん違うものだったのではないか。そんなことも考えてみたくなるが、まずは目の前の作品を素直に楽しむだけでもいいのかも知れない。ちなみに「写し」の問題については、同館の次回展『美術の遊びとこころ:美術のなかの「写」-技とかたちの継承』に期待。
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