見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

お嬢さまの雛人形/根津美術館

2006-02-20 23:56:35 | 行ったもの(美術館・見仏)
○根津美術館『雛祭り-虎屋の雛人形と雛道具-』

http://www.nezu-muse.or.jp/

 この時期になると、やや食傷気味になるほど、あちこちの美術館・博物館で「ひな祭り」関連の展示が目立つ。今月は根津美術館も「雛人形」か。まあ、パスしてもいいかな、と思っていたのだが、公式サイトに載っている雛人形の顔写真が、あまりに愛らしくて「萌え~」系だったので、行ってみる気になった。どうだろう。これだけ美しい雛人形も珍しいと思うのだ。明治時代の雛人形だというが、女性美の表現として、古さと新しさが絶妙の均衡を保っている。

 実はこの人形、実物を見るとびっくりするほど小さい。そして、この展示会、きちんとした雛人形は、この一組しかない。あとは何かというと、雛飾りのお道具のオンパレードである。箪笥、鏡台、文机、時計(!)、お膳に食器、お茶道具、楽器、盆栽、燭台、箱枕まで。

 文机には硯箱が載り、墨、硯、筆はもちろん、料紙から硯屏(硯の前に置いて風や塵を防ぐ衝立)まである。文庫には「八代集」に「湖月集」(これは源氏物語の注釈「湖月抄」かな)。謡本には「紅葉狩」や「井筒」の文字が見える。「歌骨牌(うたがるた)」と書いてあるのは百人一首のことで、札の1枚1枚に、ちゃんと絵と文字が描かれている。

 食器は、伊万里ふうの染付あり、京焼あり。可笑しかったのは、五島美術館所蔵の尾形乾山作の「菊文向付」と全く同型のミニチュアがあって、ご丁寧に「乾山」の銘まで入っている(特別出品を依頼された五島美術館も、苦笑したことと思う)。リカちゃんやバービー人形に、シャネルやヴィトンのミニチュアを持たせたいという心境と同じかもしれない。茶道具も、見る人が見れば、美濃とか志野とか、分かるんだろうな、きっと。

 この雛人形と雛道具は、和菓子の老舗・虎屋の第14代当主が、明治30年生まれの娘・算子(かずこ)のために揃えたものだという。展示図録に、カジュアルな洋装に身をつつみ、おすましする小さなお嬢さまの写真が載っている。そんなわけで、展示の要所要所に虎屋特製の雛菓子が添えられている(もちろん展示ケースの中の話だ)のも、心なごんで楽しい。

 ちなみに第二展示室では「江戸時代の調度」を特集していて、雛道具の”本物”を見ることができ、あっ、さっきは香道具だったのか!などという発見がある。
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