見もの・読みもの日記

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土地の記憶/日本地図のたのしみ(今尾恵介)

2006-02-02 22:18:05 | 読んだもの(書籍)
○今尾恵介『日本地図のたのしみ』 角川書店 2005.10.31

 著者がナニモノなのか、全く知らずに読み始めた。著者紹介を見ると、日本地図センター客員研究員などの経歴もあるが、現在はフリーのエッセイスト。要するに、子供の頃から地図を見るのが好きで、好きが嵩じてこういう本を書くことになってしまった人らしい。

 やっぱり、興味深いのは「境界」にかかわる部分である。今でも国土地理院は北方領土の地図を出している。ただし、もとになっているのは大正11年の測量結果である、とか。竹島(独島)は測量をしたことがないので、日本で唯一地形図の刊行されていない領土である、とか。ゲリマンダー状の不思議な飛び地(京都府笠置村)、鶴の首のように飛び出した境界線(福島県の飯豊神社)、国境上の宿(中山道の寝物語)など。

 地名にまつわる話も楽しい。警察署の名前には、旧区(赤坂・浅草・牛込)や旧町名(本郷の元富士署、横浜の加賀町署)が残っている、というのは面白いと思った。昭和30年頃までは、地名を変える場合も、古い地名の「記憶」を残すという配慮が払われてきた。渋谷の神泉町は神泉谷、田毎町は田子免とよばれていたらしい。埼玉県草加市の新栄町が新兵衛新田、清門町が清右衛門新田だったというのもなるほどと思う。しかし、このたびの平成大合併では、耳を疑うような地名が、マスコミを賑わせていたように思う。「愛国心」をいう政治家は、ああいう地名を許していいのかね、ほんとに。
コメント (1)
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