世の中には「マナー」を軽視する方もいらっしゃるようだが、人間が社会で寄り添って生きていくためには最低限の必要なルールだと思っている。
ただし、はたして正しいマナーが自分に身に付いているかどうかはあまり自信が無いので、マナー関係の本を見つけるとすぐに借りてくる。
本書には「食のマナー」をはじめ「人付き合い」「身だしなみ」「恥じらい」「季節を感じる」「旅」「自然と格闘する」「命と向き合う」「道なき道を行く」「生活を楽しむ」「もったいない」「気配り上手」「人生いろいろ」など多数の項目に亘って、9人の作家、エイッセイストが述べたもの。
いくつか実例を挙げてみよう。
☆ 登場人物の名前のマナー(216頁)
「先日、テレビ番組で本名が「半沢直樹」だという男性が病院などで名前を呼ばれる際に、周りがざわついて注目を浴びると言っていた。それは大変だろうなと、ちょっと笑ってしまったのだが、実在してもおかしくない登場人物の名前というのは、そうなる可能性を持っている。
そこまでの大ヒット作でなくても、こちらの書き様によって読む人が嫌な思いをするかもしれないパターンもある。物語には、ときにいけ好かない人物も必要だが、その人の名前が偶然にも自分と同じだったらどうだろう。
読んでいる小説の中にあなたと同じ名前の人が出てきたとして、そいつがろくでもない人間で、他人を傷つけることが屁とも思わないというような説明があったとしたら、なんだか嫌な気持ちになるんじゃないだろうか。
物語にも集中できないし、時間とお金を割いているのに損した気分になるかもしれない。そう思うと、たいしてこだわりがあるわけでもない登場人物の名前で読む人を不快にしかねないのは、作家としてはもったいないと思ってしまう。
もちろんそれを回避する方法はある‥、以下~省略」
という内容だったが、これで思いだしたことがある・・、何かの雑誌だったと思うがヨーロッパでの話。
「エマニエル」という名前のご夫人がいたが、病院などで「エマニエル様」と名前を呼ばれる際に、周囲の男性が思わず「ニヤリ」とするのが苦痛で、そのたびに目から火が出るほど恥ずかしい思いをする・・。
そうそう、昔「エマニエル夫人」という「R15」指定の艶っぽい映画がありましたね~、大好評で続編もあったはず~。
主演はたしか「シルヴィア・クリステル」じゃなかったかな・・、たしかに公衆の面前で呼ばれると恥ずかしくなる気持ちわかりますよ~(笑)。
次は・・、
☆ 会計のマナー(98頁)
「ドイツに行って驚いたことのひとつはワイングラスに100CCと200CCの線が必ずといっていいほどついていて、飲食店で飲み物を注文すると、線ピッタリの位置までワインが注がれて出されることだった。同じように、市販の紙コップにもあらかじめ線が記してある。
そう、彼らはキッチリしているのだ。キッチリ、同じ量を平等に提供する。これが彼らの矜持である。適当とか、いい加減は許されない。これがひとたびフランスやイタリアに行くとまったく様子が違ってくるのだから面白い。~中略~
週末ともなればレストランンに集まって家族や友人らが大きなテーブルを囲み、食事を楽しむ。そんな場面にわたしも何度か立ち会ったが、さすがドイツ人と感心するのは、お会計のときだった。
給仕さんは必ず「ツザーメン オーダー ゲトレント?」と聞いてくれる。これは会計をまとめてするのか、それとも別々に払うか?との確認で「ゲトレント」と答えれば、一人一人、自分が頼んだ飲み物と食べ物だけを支払う。
これを知って以来、日本の割り勘システムがどうも馴染めなくなった。お酒を多く飲んだ人の分を、少ししか飲んでいない人が補わなくてはいけない。不公平だ。曖昧さは日本の美徳でもあるけれど、ことお金に関することはキッチリしたいのである。だから、多く飲んだ人は自ら名乗り出て余計に支払い、周りの人のモヤモヤを払拭してほしい。ゲトレントのシステムが早く日本に広がることを願うばかりである」
ということでした。
個人的には「割り勘」システムで「不公平」の気持ちを持ったことはない・・、勘定の中に「その場の雰囲気を共有した」分まで含まれていると思うし、国民の大多数もそう思っているのではなかろうか。
その辺に、とかくキッチリと白黒をつけたがるドイツ人と雰囲気を大切にし、そしてそれに流されがちな日本人の国民性との違いが推し測られますね~。
本書にはほかにも面白いエピソードが縦横無尽に散りばめられていた。興味のある方はぜひご一読を~。
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