日頃から愛してやまない真空管アンプ。周知のとおり用途によっていろんな種類の球が挿してあるが、種類ごとブランドごとに違う音の傾向を楽しめるのも醍醐味の一つ。
何といっても花形なのは出力管、野球でいえばピッチャーみたいなもので、その個性次第でアンプの音決めが大きく左右される。そして整流管はといえば「家庭で使っている交流を直流に変える役目を担っている」だけでどちらかといえば縁の下の力持ち的存在で、まあキャッチャーみたいなものかな。
ところが、先日SPARTONのメッシュプレート型「480」整流管を手に入れて差し替えたところアンプの音が信じられないくらい変わった、とりわけ透明感と鮮度が激変したのを身をもって体験したので、それ以来「整流管の品定め」に病み付きになってしまった。
去る9日(火)はその延長でオーディオ仲間のKさん(福岡)が駆けつけてきてくれたので、二人で2台の真空管アンプによる「整流管の球転がし」を実験したのでその経過を報告しておこう。
その前にシステムの概要について紹介しておくと、
CDトランスポート 「ヴェルディ・ラ・スカラ」(dCS)
DAコンバーター 「エルガー プラス」(dCS)
プリアンプ「真空管式大西プリ」(12AU7のPP方式、ファインメットコアの出力トランス付き)
スピーカー グッドマン「AXIOM80」
試聴盤 「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲第二楽章」(モーツァルト)、ボーカル「藤田恵美」「リンダロンシュタット」
まず、はじめに、
☆ 71APPアンプの整流管「5Y3G」について
左側の画像が「71APP」アンプで一番左端に整流管が挿してある。右側の画像は試してみた3本の整流管で左から「ナショナル ユニオン」(ST管)、「レイセオン」(GT管)、そしてKさんが持参された「レイセオン」(ST管)。
「それほど大きな差はありませんが、さすがにレイセオンですね。音がよく締まっていて低音域の弾み方が違います。これが原音に近い音だと思いますよ」と、レイセオン党のKさん。
じぶんではレイセオンのGT管よりもナショナル・ユニオンのST管の方が好きだが、レイセオンのST管ともなるとやはり一枚上だと思った。「この球いいですねえ」と眺めていたら、「このST管はもう使うことがないので進呈しますよ。」と、Kさん。
良かった!(笑)
それにしても、「北国の真空管博士」によって新装なった「71APP」アンプの音質に感心することしきりだったKさん。「古典管の博識ぶりは驚異的だし、アンプづくりの腕もたしかだし、この両方が並び立つ人はそうそうはいませんよ。まったく鬼に金棒的な人ですね。」
やっぱり世間は広い。しかも東京とか大阪とかの大都会ではなくて「文化果つる地」というと怒られそうだが、北国在住というところがひときわ凄い(笑)。
次の「球転がし」がこれ。
☆ 「371」シングルアンプの整流管「80」
けっして自慢するわけではないが、国内で「71」系の整流管「80」のうちこれほどの稀少管を勢ぞろいさせて試聴テストした例は皆無に違いない。
左から「UX213」(メッシュプレート)、レイセオンの「ER280」、某メーカーの「280」、SRARTONの「480」(メッシュプレート)、「青球180」(ARCTURAS)と、いずれもほぼ未使用に近い状態。
メッシュプレートの2本はじぶんのもので、残る3本はKさんが持参されたもの。これらの球を挿し込んで実験したアンプがこれ。
ドライバー管は「471B」(デフォレ)、出力管は「371トリタン」(カニンガム)といずれも「71」系。トランス類は電源トランスを除いてオール「UTC」。
「もうこのクラスになると音がどうのこうのと言ってられないですね。どれもこれも凄いの一言です!」。
こう書くと身も蓋もないのであえて贔屓目に言わせてもらうと、音の鮮度という面で「メッシュプレート管」は独特の味わいを持っていた。
こうして、真空管アンプの魅力をとことん味わいつくした一日となったが、最後にKさん曰く「この二つのアンプがあればもう十分ですよ。」
「そうですね。シングルアンプの透明感と分解能の良さ、そしてプッシュプル・アンプの力感と厚み、それぞれ捨てがたい味わいがあります。どうやらようやく我がオーディオもゴールに近づいてきた感じです。」
おいおい、そんなご大層なことを言っていいのかな・・(笑)。