「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

北国から帰ってきたアンプ

2016年02月02日 | オーディオ談義

「北国の真空管博士」(以下「博士」)に改造していただいた「71Aプッシュプルアンプ」(以下「71APP」)が我が家に到着したのは30日(土)の丁度お昼時だった。

開梱の真っ最中に「ご飯ですよ~」という声を背に受けたものの、「そんなものは後回しだ!」と、思わず声を荒げてしまった(笑)。

慎重に小包から取り出すと、所定の位置に真空管を挿し込んでRCAコード、SPコードの結線を完了。
          

この「71APP」の概略を述べておこう。まず出力トランス(画像右上)からだが博士から次のような情報提供があった。

「ピアレスのオープンコアタイプ(通称バンド型)が使われていたのでもしやと思い調べてみました。型番の一部が判読不明で難儀しましたが16166X型であることがわかりました。

このトランスは元々ライントランスで主にアルテックのモニタースピーカーに内蔵されていたようです。ハイインピーダンス側に中点が引き出されているのでPPであればOPT(出力トランス)に流用することができます。

新さんがラジオ技術にこのトランスを使用したアンプを発表されたような記憶があります。モニタースピーカーに使用されたトランスですので音が悪かろうはずがありません。」

あの有名なピアレス製(アメリカ)だから、なかなか由緒ある出力トランスなのである(笑)。ノイズ対策なのか、見てくれなのか、当初の位置からすると斜めに配置替えしてあった。

次に整流管は「5Y3G」を使うように指定があった。一般的に使われる「5U4G」あたりと比べると随分控え目な球である。しかし、「71A」を使うときには「80」と並んで定番である。

次に出力管はナス型の「71A」が4本(画像左側)で手前側2本が左チャンネル用、後方2本が右チャンネル用でこれは不変。

そして最後に今回の改造のハイライトとなった電圧増幅管「227」が4本(画像右側)。出力管と同様に手前側2本が左チャンネル用、後方2本が右チャンネル用。

そして、ここからが今回の改造のキモとなった部分である。平行に並んだ2本のうち右側が第一次増幅管となり左側が第二次増幅管となる。ノイズ対策上、第一次増幅管には厳しく選別した球を使う必要があり、その結果6本中3本が合格し、残り3本は少々のノイズが出ても許される第二次増幅管へと回された。同じ型式の球でもそれほどシビヤな選別をしなければならないのかと驚いた!

「古典管」のバラツキというリスクには後ほど、つくづく思い知らされることになるがそのときは知る由もなかった。

なお、博士によると「古典管のノイズ対策」は格別のようで次のようなコメントがあった。

古典管のアンプの設計にあたっては現代管にない難しさがあります。特にアンプの残留雑音を低く抑える難しさは現代管の比ではありません。言い換えれば現代管の開発は増幅効率の向上と低雑音化の歴史であったとも言えます。

雑音の多い古典管を上手に使うためには、先人がどのような工夫をしてこれを乗り越えていたかを学ぶ必要があります。私は古典管アンプ製作のバイブルと言われる名著「魅惑の真空管アンプ」の上・下巻を暗記するほど読み込みました。

USAよりも真空管関連の技術が発達していたドイツのアンプの回路図にも多くを学びました。安直に直流点火を採用するのはなるべく避けたいのです。その方が自分のアンプ製作技術の向上につながります。

むろん私など名だたるアンプビルダーの前では“ひよっこ”に過ぎませんが日々研鑽を積みたいと考えています。〇〇様のアンプをお引き受けしたのもそんな考えがあってのことです。最後に
、今回71APPアンプに施した裏ワザですが三段アンプの初段で発生するノイズを低減するために実施しましたが、古典電圧増幅管の寿命にとっても有効です。」とのことだった。

さ~て、いよいよ71APPの音出しで緊張の一瞬である。

テストソースは大好きな「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K364」(モーツァルト)で、「五嶋みどり」さん会心の一枚である。音響空間の中央やや左側にヴァイオリンが定位し、やや右側にヴィオラ(今井信子さん)が定位してその掛け合いともなるとモーツァルトの音楽ここに極まれり、その興趣たるや筆舌に尽くしがたい。ヴィオリンとヴィオラの音色の違いがどこまで鮮明に聴こえるかもハイライトである。

ちなみに、音楽評論家の「中野 雄」氏によると(「クラシックCDの名盤」419頁)、現在、世界に超一流として通用する日本の音楽家は4人、「小澤征爾」「内田光子」「五嶋みどり」「今井信子」だそうで、そのうちのお二人さんの「そろい踏み」なので悪い演奏のはずがない!

繋いだスピーカーはグッドマンの「AXIOM300」(アルニコ型口径30センチのダブルコーン)。繊細で壊れやすい「AXIOM80」に最初から繋ぐほどの度胸はとても持ち合わせていない(笑)。

さあ、思い切ってスイッチオン!

以下、続く。


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