去る3日(水)、およそ10年ぶりに釣り友達のA君(大分市)が来てくれた。
A君とは現役時代に、たまたま同じ職場となりお互いに「釣り好き」と分かってたびたび一緒に釣行した仲良し。
お互いに退職した後も欠かさず年賀状のやり取りを続けていたが、今年の賀状に「第二の就職先を退職しました。現在は釣り三昧です。ほかにも最近は倉庫から昔のステレオ装置を引っ張り出してジャズを聴いてます。」と、あった。
すぐに電話して「ジャズが好きなら聴きにお出で~。まあまあの音を聴かせられると思うよ。」
「1月いっぱいは〇〇学園の果樹の剪定の仕事が入っているので、2月に入ったらまた電話するからよろしく~。」とA君。
そして、1か月後の2月3日(水)の早朝、電話があって「今日の午後はご都合がいいですか?」「いいよ~」と一つ返事。
現役時代ともなると「生活の糧」を凌ぐためのマキャヴェリズムの世界なので、あまり思い出したくない顔が多いが(笑)、趣味を通じての付き合いとなるとその絆は海のように深い。
A君がカーナビに誘導されて我が家にたどり着いたのは13時50分ごろだった。
オーディオルームに入るなり「ワ~ッ」。持ち主にはいつも見慣れている光景なのでどうということはないが、他人からするとスピーカーが3台、真空管アンプが8台ズラリと並ぶと一種異様な光景に映るものらしい。
ジャズがお好きというので、日頃滅多に聴かないマイルス・デヴィスに始まって、「エラ&ルイ」や「J・コルトレーン&J・ハートマン」などを聴かせてあげた。
鳴らしたスピーカーの順番は次のとおり。
1 「フィリップスの口径30センチ・ダブルコーン」(アルニコマグネット:ウェストミンスターの箱入り)、アンプはWE300Bシングル(モノ×2台)
2 「AXIOM80」(最初期版)、アンプは新装なった「71APP」
3 「AXIOM300」、アンプは「同上」
ひととおり試聴後に感想を聴いてみた。どうせ「1」が見てくれからいって一番気に入ったというに違いないと思っていたところ次のようなコメントがあった。
「2はとてもクリヤで音に浸透力があるね。ちょっとスピーカーのツクリが違うような気がする。あまりに(音が)良すぎて、ほかの二つがちょっと聴き劣りするよ。こんな音を聴かされると我が家で聴くのがイヤになるな~。」
上から目線で言っては何だが、A君は素人にしておくには勿体ない(笑)。
オーディオマニアは現在ではとても珍しい人種のひとつになったが、それになるきっかけとなると、他所の音を聴いたときに「我が家ではどうしてこんな音が出ないのだろうか」という素朴な疑問から出発するのがほとんどである。
A君がこれから深みにはまるかどうか、奥様の理解度も非常に影響してくるが今後注視することにしよう(笑)。
それにしてもA君からは最新の釣理事情などが聞けて楽しかった。釣り道具も随分進化しているようで、たとえば釣り糸がまとわりつかない竿のガイドの開発や、糸のヨレがかかりにくいリールの開発など欲しいものがいっぱいあった。ただし、いずれもちょっとした真空管アンプほどのお値段がするのでうかつに飛び付けない。
それでも釣りはオーディオと違って「魚」という獲物があるので家庭の食卓への貢献度はバカにならないし、それに家内の友達にはいつも(釣れた魚を)配って感謝されている。「半分くらい出してもらおうかな~」と不埒な考えがチラリと脳裡をよぎる(笑)。
最後に、A君が(2日に)釣りに行ったお土産としてクロ(メジナ)を持ってきてくれた。
目印に置いた携帯の長さが11センチだから45センチクラスの大物だ。この時期のクロは「寒グロ」といって年間で一番美味とされているが、すべて刺身にして残りのアラはお吸い物に。
家内曰く「こんなに脂が乗っておいしいクロは初めて!お父さんもこのクラスを釣ってこないと~」
これは悲しい現実だが釣れた魚のサイズは不思議に釣り人の器量に比例する。じぶんのような小心翼々としてチマチマした人間に大きな魚は釣れないのだ(笑)。
まあ、実を言うと、こういうサイズは波止場から釣るのはちょっと無理。渡し船に乗って荒磯場に行かないと釣れない。実際、A君によると釣れたのはウキ下7m前後の深場だったそうだし、しかも好ポイントに上礁するためには出船の時刻が午前3時頃だから、ほとんど徹夜同然の釣行となる。この冬の寒い時期に虚弱体質のじぶんにはとうてい無理な相談。
美味しい魚は食べたいし、身体はとても付いていかないし、ヤレヤレ。