「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「当たるも八卦当たらぬも八卦」シリーズ~その3~

2014年12月23日 | オーディオ談義

品質保証が定かではないオークションの品物は当たりもすればハズレもする。今回は大いに食指をそそられたものの、やむなく見送った案件を2つほど挙げてみよう。

☆ SHINDO LABORATORY 新藤 300B モノラルパワーアンプ

            

名管の誉れ高い真空管「WE300B」を使用した豪華なアンプである。

掲載されていた解説によると使用頻度が少なく内部パーツはほぼ純正状態、真空管も当初のオリジナルのままで出力管「WE300B」、整流管「WE274B」、初段管「WE310A」、二次増幅管「WE349A」という全てウェスタン製の真空管。

定評のある名管ばかりで真空管マニアなら一度は聴いてみたいという涎が出そうなアンプ(笑)。

制作元の「新藤ラボ」のアンプは所有したことはないが、知人が同社の「KT88プッシュプルアンプ」(モノ×2台)でクリプッシュホーンを鳴らしているのを聴かせていただいたことがあるが、クセのない朗々たる音だった。

今回のケースでは自分は既に「WE300B」アンプ(モノ×2台)を持っているし、欲しいことは欲しいがとても手が出ない価格になるのは分かりきっていたので半分は諦めムードだった。残された興味は価格がどこまで上がるかということだったが、結局最終落札価格は「111万円」(12月14日)という、オークションでは珍しい高値を呼んだ。

オーディオ仲間も注視していたが「おそらく落札者は中国ルートでしょう。転売すれば250万円は固いでしょうからね。」とのことだった。あな恐ろしや~(笑)!

ところで、この際とばかりここ20年ほど聴いてきた「WE300B」観について個人的な意見を述べてみよう。「雉も鳴かずば撃たれまいに」だが(笑)。

どちらかと言えば音声信号を忠実に再生するクセのない真空管で無色透明に近い持ち味がある。安心して音楽を聴ける反面、魅力を積極的に発散するタイプではない。「振るい付きたくなるような音」とは無縁の存在で、中高音域に独特の艶と華やかさを持つ「AXIOM80」にはちょっと合わない。総じてヨーロッパ系のスピーカーは苦手の部類に入るだろう。

ただし、真空管の音質の「決めつけ」はうかつにできない。ドライバー管や出力トランスの性能などによって激変するのであくまでも「現時点では」という予防線付きでの話~。


☆ 真空管アンプ 「2A3」トランスドライブ パーマロイコアの出力トランス使用

ネットからウッカリ消去してしまったので写真を掲載できないのが残念だが、このアンプばかりは入札に参加しようかどうしようかと最後まで迷った。

当初の段階で同じ「AXIOM80」仲間に相談を持ちかけると「解説文からして出品者は真空管の扱いにものすごく長けた人の匂いがしてきます。ウェスタンの274B(整流管)、ヴィソース(フランス)の刻印入り2A3が4本も付属していてとてもお買い得品ですが、後は入札価格がどこまで上がるかですねえ。」

いくらオーディオ大好きといっても「矩」(のり)というものがある。法外の値段に追従する積もりは毛頭ないが、付属の真空管の価格だけで軽く20万円はいくだろうから、30万円ぐらいまでなら狙い目である。それに一番魅かれたのは「パーマロイコア」の出力トランスだった。

なぜか?

これは自分のケースに限っての話だが、これまで一番苦労したのが低音域の処理だった。

低音域はピラミッドの底辺のような基礎的な役割を果しており、「音の分解能に秀でて爽やかで軽くて弾むような低音」が理想だが、これが残念なことにいまだに実現できていない。

「分解能」と「量感」が両立せず、ドロ~ンとしたような低音が全体の足を引っ張ってしまう。変な低音を出すくらいなら「いっそのこと物足りないくらいの方がいい」というので、実は「AXIOM80」を愛用している理由のひとつもここにある(笑)。

ちなみに「分解能のいい音」というのは、平たく言えば「演奏されている楽器の位置と音色がくっきり浮かび上がって明瞭に聴こえること」をいう。

熟練したマニアからよく「重たい低音」「軽い低音」という言葉を聞かされるが、音の分解能が優れていると明らかに軽い低音のイメージを受ける。音に目方があるわけではないので、こればかりは聴感上の問題だが他家で試聴させてもらうときは、いつもこの点に神経を集中する。

これまで聴かせてもらった中で「軽い低音」の最たるものはGさん宅(福岡)の音だった。ジェンセンのフィールド型(口径46センチ)だったが、大口径のユニットにもかかわらず、まるで涼風が吹き抜けていくような「軽い低音」にビックリ仰天していまだにその時の音が耳に焼き付いて離れない。

詳しくお伺いしてみるとアンプの出力トランスのコアがパーマロイだそうで、爾来「パーマロイのコア」は憧れの的となった(笑)。

今回、出品されたアンプも出力トランスが「パーマロイのコア」ということで大いに魅かれたわけだが、少し気になったのが「インターステージトランス」がパーマロイのコアを使ったものではなかった。これが唯一ともいえる瑕疵だった。

「これさえ揃ってくれれば絶対に入札に参加するのだが」と切歯扼腕(?)。

最終局面になって再度仲間に相談してみると「オークションは少しでも気に入らない点があるときは止めといた方がいいですよ。ほら、ネクタイと一緒ですよ。すべて気に入った柄を買ったときはいつまでも愛用しますが、そうでないときは無用の長物になりますよ。」

結局入札を見送ったが、大いに気になった最終落札価格は25万円だった。安い!

しかし、このアンプの所有者はどうしてこれほどの逸品を手放す気になったのだろう。その辺の理由はいっさい記入されてなかったのがちょっと気になる。真空管「2A3」はとてもいい球だけどあまりにも品行方正すぎて少し物足りない点が出てくるが、そういうところに嫌気がさしたのだろうか。

「逃がした魚は大きかった」とばかり、名残惜しげに憶測は尽きない(笑)。


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