10日ほど前に例によって3か所の図書館から16冊ほど借りてきて、すべて目を通したところ論評に値するのが4冊程度で確率は1/4だった。
1/4といえば昨日のテレビで放映していたニュースを思い出す。
11月22日は「いい夫婦の日」だそうでそれに因んで、ある会社による調査で「生まれ変わっても今の伴侶と一緒になりたいと思いますか?」の問いに対して男性はおよそ40%が「はい」の答えだが、女性の方はわずか1/4の25%前後に留まった。
女性は現在の伴侶にけっして満足していない人が多いようだ。「男女間のこの落差は、いったいどこから来るんだろう」と、しばし考え込んでしまった。
ま、あまり不満はないけれど、今とは違った人生を歩んでみたいという変化の方を望む気持ちが女性には強いのかもしれない。ほら「女心と秋(飽き)の空」という言葉があるでしょうが。
それにしても「灯台 下(もと)暗し」で我が家の場合はいったいどうなってるんだろう?
なにせ稼ぎは悪いしやたらに趣味が多くて女房そっちのけなので、いずれ「倍返し」の仕打ちをされるに違いないとにらんでいるが、はたして(笑)。
さて、その4冊について。
☆ 「推理作家の家~名作の生まれた書斎を訪ねて~」(2012.5.17、西村書店、文/写真 南川三治郎)
本書は実に興味のある本だった。
収録してある作家は世界的にも有名な一流作家ばかりで30名(うち存命中は16名)にも達し、それも辺鄙な場所にもかかわらず逐一訪問して実際に取材された結果をまとめたものなのでたいへんな労作といえる。
ちょっと挙げただけでも次のとおり。
ジェフリー・アーチャー カトリーヌ・アルレー ローレンス・ブッロック トム・クランシー パトリシア・コーンウェル マイクル・クライトン コリン・デクスター フレデリック・フォーサイス グレアム・グリーン ジョン・ル・カレ ギャビン・ライアル ジョルジュ・シムノン
写真が大きくて見やすいし、創作スタイルや日常生活について詳しく語られている。自ずと作家の人柄も炙り出されている。
次回作には、ぜひ日本の推理作家の書斎も拝見したいものだ。
☆ 「北の街物語」(2013.8.10、中央公論新社、内田康夫著)
推理小説「浅見光彦シリーズ」は大好きで、これまで100冊以上が出版されているが読み逃がした作品は1冊もないと断言できるほどの熱心な愛読者である。
この作品は最新作で、たまたま図書館の新刊コーナーで見つけて大喜びで手に取ったが、読み進んでいくうちに「内田さんも老いたなあ」の感がどうしても拭えなかった。
「北の街」というタイトルだから北海道の旅情ミステリと思ったのだが、何と東京都北区の話だったのでまずガッカリ。
それに、偶然性が多すぎる、辻褄合わせに汲々としている、ノリが悪いというのが率直な印象。これでも面白いという人がいるに違いないが、往年の作品を知っている者にはちょっと物足りない。
内田さんの近年の作品は総じてどうも読み応えがしない。次回作には起死回生となる作品を期待したいものだが。
☆ 「エンニオ・モリコーネ、自身を語る」(2013.8.30、河出書房新社、アントニオ・モンダ著)
エンニオ・モリコーネといえば「映画音楽」の世界では知らない人はおるまい。
代表作とされる「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のデボラのテーマをはじめ「ニュー・シネマ・パラダイス」、「ミッション」、「ウェスタン」などのテーマ音楽を書いた作曲家。
そういえば、以前音楽好きの小泉純一郎元首相の推薦というモリコーネを特集したCDがあり、長いことクルマの中で愛聴している最中。
本書によると、モリコーネ氏は実に謙虚な方で、数多くの監督や俳優などと仕事をしたにもかかわらず、人物批評においては慎重に言葉を選びながらいっさい悪口を言わないのが印象に残った。
最後に、「自分で代表作だと思うものを三作挙げてください」の問いに対して、長くためらった挙げ句次の答えがなされた。(226頁)
「ミッション」の“天になる如く地にも”、「ワンス・アポン・・・・・」の“デボラのテーマ”、それからトルナトーレの映画の一曲「記憶の扉」「海の上のピアニスト」シチリア!シチリア!」。
☆ 「七色の毒」(2013.7.25、角川書店、中山七里著)
前著「切り裂きジャックの告白」で大向うを唸らせた中山さんだが、その才能には大いに括目すべきものがあった。年末が近づくとそろそろ恒例の「年間ミステリベスト10」の発表が待ち遠しいが、個人的には「切り裂き・・・」が本年度の「国内ベスト1」だと予想している。
はたして“当たり”となるか“ハズレ”となるか、お楽しみ~。いずれじっくりと検証させてもらおう(笑)。
さて、本書にも中山さんの才能がいかんなく発揮されている。
「赤い水」「黒いハト」「白い原稿」「青い魚」「緑園の主」「黄色いリボン」「紫の献花」と、色彩ごとの7つの物語で編集された短編集だがそれぞれに新鮮味があって非常に面白かった。改めて「ポスト東野圭吾」にふさわしい作家だと思った。今後が非常に楽しみなミステリー作家である。