「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「明るい音」と「暗い音」

2013年11月19日 | オーディオ談義

去る11月16日(土)は高校時代の同窓生たち3人(福岡)との定例の試聴会だった。

前回は7月上旬でこれまでおよそ4か月おきぐらいに開催しているが、いずれ劣らぬ「音楽&オーディオ」大好きの仲間たちでお互いに遠慮なく自由闊達な意見が飛び交い、辛口の意見もあったりしてシステムの持ち主にとっては少しばかり怖い試聴会でもある(笑)。

それもあって今回も一週間ほど前からシステムの調整に余念がなかった。何せAXIOM80(以下「80」)をグッドマン社のオリジナルエンクロージャーに容れてから、初めて聴いてもらうわけなのでそのストレートな感想も非常に待ち遠しい。

前日までプリアンプやパワーアンプの真空管の相性をいろいろ確かめたりして、「良し、もうこれで万全」といったところまで詰めてみた。

さあ、いよいよ当日。幸いにも秋晴れの中、高速バスでやってきた仲間をバス停まで迎えに行って自宅に着いたのが丁度13時ごろ。

夜の「飲み会」が18時からの予定なので、それまでみっちり5時間の試聴となった。

結論から言えば仲間たちの感想は「可もなし、不可もなし」といったところで、絶賛を予想していたので少しガックリ(笑)。

どちらかといえば音楽好きの連中なので、周波数レンジ(20~2万ヘルツ)などがどうのこうのというオーディオ的な話よりも、じっくりと音楽鑑賞に浸れる音なのかどうかが大きなテーマとなった。

何せ試聴盤に使ったのが持参してきてもらったベートーヴェンのピアノソナタ32番(作品111)などのややシリアスな曲目が中心となったことからもその場の雰囲気が推し量れることだろう。

試聴するうち「80の音は明るいね」と、日頃、タンノイGRFメモリーを愛用しているひとりからポツンと一言。

昔、自分もタンノイを愛用していたことがある。「ⅢLZ → インパルス15 → ウェストミンスター」の変遷をたどったのでタンノイの音を熟知しているつもりだが、けっして「抜け」とか「分解能」はよくないものの、まるで「いぶし銀」のような音でもって人間の心の奥深い襞のようなものを表現するのには非常に長けている。まあ、こういう音でないと伝わってこない音楽があるのもたしかである。

「明るい音だね」の言葉の背景にはおそらくそういう含みが込められているようで、何となく「ほめ言葉」と素直に受け取ってはいけない雰囲気が漂っていた。

成る程、そうかもしれない。「80」の音は屈託がなく、まるで秋の空天高く、どこまでも澄み切った青空のような音を出す。逆に言えば「人の心にそっと寄り添って慰めてくれる音ではないのかもしれない」と、ふと思ったことだった。

「明るい音」と「暗い音」(内省的な音という意味)という分類は今まで考え付きもしなかったが、「人生 山あり谷あり」の中で心の友として音楽を鑑賞するとなると、当然そういう区分も“あり”なのだろう。

となると「80」はクラシックよりもむしろジャズに向いているのかもしれない。そういえば、11日(月)にお見えになったKさん(福岡)が、「80はクラシックよりもジャズに向いてますよ」と何気なく仰っていたが、その時は意外な言葉だと受け取めたがこれで合点がいく。

ジャズにはつきもののベースの重量感さえ気にしなければ、あのあっけらかんとした抜けのいい音は明らかにジャズ再生に向いていて、「エラ&ルイ」のサッチモの突き刺すようなトランペットの音はまるで「80」の独壇場。

ま、そういうわけでつまるところ「オーディオは百人百様」ということを、しみじみと噛みしめた今回の試聴会でした(笑)。

ところで、仲間が持参したピアノソナタ32番の演奏者は「シフ」だったが、「内田光子さんの32番もいいよ」と皆さんに聴いてもらったところ、大好評。32番は若い頃に傾倒していた影響でバックハウスをはじめ12名の演奏者のCDを持っているので自分の十八番みたいなもの。

         

ベートーヴェンが「ピアノソナタのジャンルにおいてはこれですべて表現し尽くした」とされるこの32番の深遠なソナタは旧来の形式の枠にもとらわれることなく、わずか二楽章の編成であるが、終わりの部分などはまるでジャズのノリそのものといったところで、演奏者の個性が問われるところ。シフも内田さんも演奏時間が18分のところをバックハウスは5分も短縮して13分で目くるめくように駆け抜けていく。

なお、最後になって聴いてもらったマリア・ジョアン・ピリスの弾くモーツァルトのピアノソナタ全集(6枚組)も非常に評判が良くて皆さんウットリの境地。個人的には現代最高のピアニストはピリスに尽きると思っている。これもコピー盤のリクエストが相次いだが「法律違反になるからダメ」の冷たい一言で一同快く納得(笑)。

場所を変えての「飲み会」はいつものように談論風発で非常に楽しかった。そのうち古い真空管が話題になって仲間の一人から「昔の真空管は使用頻度にかかわらず、外気と接触しているガラスを通して内部の真空度が落ちている可能性があるので手を出すのは考え物だよ。」

そういえば「1950年代のWE300Bよりも1980年代のWE300Bの方がヘタっていないので安心」という噂を聞いたことがあるが、あながち否定できないようだ。


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