我が家の台所にある包丁は「銘品」を使ってないのですぐに切れ味が鈍くなる。
これまでは2~3か月おきに飛び込み訪問してくる「砥ぎ師」さんに任せていたが、最初の頃は丁寧な仕事をしていたものの、ここ数回ほどはすぐに分かる程の“おざなり”の仕事なので別注することにした。
家内が勤めている会社の同僚(仮にNさんとしておこう)のお兄さんが大工さんで、砥ぎの方もなかなかの腕前とのことで、物は試しにと3本ほどの包丁を砥いでもらうことになった。
そのNさんが我が家に包丁を受け取りに見えたのが去る27日(日)の午後のこと。これまでに何度も顔を合わせているのでお互いに気安く冗談を言い合える仲である。
丁度、部屋に閉じこもって音楽を聴いていたところ、しばらくして家内が「Nさんが音楽を聴かせてくれと、言ってるけどいいかしら」。
日頃、亭主の趣味には無関心で、どちらかといえば冷たい視線の持ち主だが、こういうときはまあ、四の五の言わずに点数を稼いでおくに越したことはない。
「ああ、お安い御用だが、いったいどういう曲が好きなのかな?」
さっそく部屋に入ってこられたNさんにお伺いすると「ビートルズを聴かせて欲しい」とのこと。女性に年齢を訊くのは失礼だが、ビートルズ世代ということで読者の方々にはおよそ想像がつくことだろう。
幸い、ビートルズの名曲ばかり「27曲」を集めたCDを持っていたので鳴らしてあげたところ大喜び。
日頃の「モーツァルト」から「ちあき なおみ」までの幅の広さがこういう時にものをいう(笑)。ちなみに使用したシステムは「AXIOM80」。
ビートルズをほどほどに切り上げて、今度は「カーペンターズを聴かせて」とのことで、これもすんなり移行。
しばらく聴いた後に「システムが変わると曲目のイメージも変わりますよ。今度は別の装置で聴いてみましょうかね」と、JBLの3ウェイシステムに切り替えたところNさんからすぐに反応があった。
「何だかゴチャゴチャしてる感じ!元の装置の方がすごく音が澄んでいて断然聴きやすかったわ。悪いけどまた元に戻してくれないかしら~」
エーッ、こんな素人さんでも音の違いが分かるのかと驚いた!
大規模編成のオーケストラとなるとまったく違和感を感じないJBLシステムだが、ことボーカルとなると歌手がカバみたいに大きな口を開けて歌う(笑)のが悩みの種だったが、こんなに“あけすけ”に指摘されるとむしろ爽快感さえ覚えてしまう。
「素人さんの耳と口は怖い」(笑)。
先日(26日)の福岡での試聴で我が家の低音域の対応には一考を要すると思っていたのだが、素人さんから指摘を受けるようではいよいよ(システム改変の)踏ん切り時かなあ。
とりあえず、2つの対策を講じてみた。
まず手始めに低音域用(JBLのD130ユニット)のアンプをケンウッドのDCアンプ「01ーA」から真空管式の「PX25 2号機」へ代えてみた。
いたずらにパワーを欲張らず、イギリス流の「品の良さ」で勝負することに。クロスオーバー周波数は今までどおりコイルを使って200ヘルツ前後(6db/oct)でハイカット。
次に、中高域用のユニット「JBL375+075」を1台のアンプで鳴らしていたのをそれぞれ別のアンプで鳴らすことにした。これで3ウェイ・マルチに移行。
低域用(D130) → 「PX25・2号機」 中域用(375) → 「2A3・2号機」 高域用(075) → 「2A3・1号機」
110db前後の高能率ユニットにはできるだけ小出力のアンプを組み合わせるというのがささやかなポリシー。
これで3台とも真空管アンプになったので音色のマッチングも不安なし。
「エラ&ルイ」のボーカル、大好きなモーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」(K364)などを聴いてみたが、随分とフルレンジの鳴り方に近づいている。これはいけそう!
昨日(2日)になって家内が言うのには「Nさんがお気に入りのCDを見つけたみたいで、また聴かせてもらうと張り切っていたわよ」。
「ああ、望むところだ。今度こそ倍返しだ!」(笑)