チャンネル WOWOW191
放映日時 2007年1月26日(金曜日)22時~24時
番組名 洋画「羊達の沈黙」(アメリカ)
制作年 1991年
監督 ジョナサン・デミ
出演者 アンソニー・ホプキンス(レクター役)
ジョディ・フォスター(クラリス役)
スコット・グレン(教官役)
上映時間 118分
原 作 トマス・ハリス「羊達の沈黙」
概 要
アカデミー賞作品部門ほか監督、主演男優、主演女優など主要5部門を独占したサイコスリラーの傑作である。猟奇殺人犯を追うFBI女性訓練生クラリスは、かって同様の事件を起こして服役中の天才博士レクターに助言を請いに監獄を訪ねるが・・・・・。
私の感想
約15年前に観た映画だが、再度観てもやはり面白かった。
冒頭のシーンでFBIの訓練学校の入り口近くの木に「”苦しみ、悶え、痛み”を愛せ」という標語が掲げてあるのが印象的だ。自分自身が楽をしたがる性質(たち)なので戒めとして身に沁みて記憶に残っている。(ただし、実行はできなかったが・・笑)
貧しい家庭に育った利発なクラリスはFBIの訓練課程で立派な成績を残し、それがもとで教官から見出され、監獄にいる殺人鬼レクター博士の尋問に向かう。
ここでクラリスはおざなりに備えた靴と、気を入れて買ったハンド・バッグとのグレードの違いを指摘され、はっとする。ただの殺人鬼だとたかをくくっていたレクターが、観察力に優れたインテリであり、その発想には深い洞察が含まれていると知るからである。こうして、クラリスは凶悪犯に、いわば人生の師を見出していく。
この映画は猟奇的な殺人事件とそれを解決するのにFBIが凶悪な天才犯罪者の手を借りるというのがストーリーの核となっているが、一方でこういう若い女性と初老のインテリとのかかわりを描いた映画としても楽しめる。
前回観たときには、殺人捜査のミステリーの展開だけに関心を持ったが、今回ではむしろ、こういう人と人との関わりで若い女性が成長していく物語としてもよく出来た映画だという思いがした。人生の妙味とは優れた師とのめぐりあいでもある。
主役を演ずる、ジョディ・フォスターは知的な雰囲気があって含羞を感じさせる表情が実に豊かで、この映画をみてファンになったが今では押しも押されぬ大女優となっている。これは余談だが、男児を二人生んだ(父親をあかさないが人工授精との噂)そうだが・・・。
また、もう一人の主役アンソニー・ホプキンスも入魂の演技だ。超インテリと人肉を食する凶悪殺人犯との2つのイメージを演じ分けているが、複雑怪奇で不気味な雰囲気を見事に醸し出している。
映画の中程で、警官を惨殺するシーンの直前にバッハの「ゴールドベルク変奏曲」を聴いていたのが知的な静謐と残忍さの両極端を暗示して印象的だった。
まだご覧になっていない方は一度見ても損はしない映画である。(2007年2月18日14:50~16:50にWOWOWで再放送の予定)
なお、馬場啓一氏の「人生に必要な全てをミステリーに学ぶ」によるとトマス・ハリスの原作ではクラリスが貧しい境遇に育ったことが重要な背景になっており、「貧乏は恐ろしくない、しかし恥じる気持ちが人間を卑屈にしてしまう」という信念のもとで、さまざまな苦境を乗り越えて雄々しく生きていく若い女性の自立の過程を実にたくみに表現していて文学作品の香りがすると評されている。
苦しみ、痛み、悶え フォスター ホプキンス