教育新聞 2025-04-11 中岡 望 ジャーナリスト
悪化する教育の質
筆者が初めてメキシコを訪れたのは、1980年代半ばだった。メキシコ市は華やかな大都市であったが、昼間から路上に多くの子供が遊んでいたので、けげんに思い、理由を聞いてみた。学校の教室の数が足りず、授業は2交代のシフト制になっているということだった。当時、まだ発展途上国であり、十分な教育インフラは整っていなかった。
それから40年経過している。メキシコ経済は大きく成長した。GDP(国内総生産)は世界第12位になっている。一方で1人当たりのGDPは2023年の統計では1万3790ドルで、決して多くはない。日本の1人当たりのGDPは約3万4000ドルである。経済は大きくなったが、人々は豊かになっているわけではない。現在でも、教育インフラの不足が指摘されている。
メキシコの教育は所得格差と地域格差に加え、先住民族が多く、60を超える言語が存在するなどさまざまな問題を抱えている。全国に23万1000の学校があり、2100万人の小学生が通っている。小学校の就学率は90%と高いが、中学校は62%にとどまっている。しかも中学校の卒業率は45%と低い。その大きな要因が、農村部での教育インフラの不足にある。しかも経済的に貧しい南部の非識字率は北部の10倍も高い。
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