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<第15部 室蘭・イタンキ浜かいわい>波と戯れ 市民憩いの場

2019-06-28 | アイヌ民族関連
北海道新聞 06/28 05:00
 駅や学校、スーパーが集まる室蘭市東町の市街地から5分ほど車を走らせる。視界が開け、太平洋の大海原が見えてきた。
 車を降りると、潮の香りが漂い、穏やかな波の音が聞こえる。砂浜に向かう。犬を散歩させている人、波打ち際を駆けるランナーがいる。青い海では、サーファーたちが華麗に波を乗りこなしている。
 ここは「まちのものがたり」第15部の舞台、イタンキ浜だ。緑豊かなビオトープ、全国的にも珍しい砂浜の「鳴り砂」―。市街地近くとは思えないほど自然にあふれ、西胆振随一の浜辺として多くの市民が訪れる。最近は小型無人機(ドローン)の撮影地としても人気が高い。
 かつて浜周辺の景色は、今とはまったく異なっていた。「この地区には昔、競馬場やゴルフ場があったんだ」。イタンキ漁港の近くに70年以上住んでいる一戸鉄男さん(79)が、そう教えてくれた。
 1929年(昭和4年)に開業したゴルフ場は、浜風をもろに受ける難関コースとして知られた。戦後間もない46年には「進駐軍競馬」が開催され、4日間で延べ15万1千人が観戦したという。
 一戸さんは「沼地があって、トミヨやメダカが見られた。高い砂山だらけで、その砂は太平橋の建設に使われたんだ」と懐かしそうに話す。戦後、蘭東地区の拡大と発展に伴い、81年に室蘭新道が開通するなど、浜周辺も大きく姿を変えた。
 海を離れて街に戻ろう。校庭で遊ぶ児童、部活に取り組む生徒の声が響く。バスターミナルから路線バスが次々と発車する。「ものづくりのマチ」を支える町工場が軒を連ねる。地域の安全を守る警察署は、2003年に蘭西地区から移転してきた。
 イタンキ浜かいわいは多彩な顔を持つ。浜に生きる人、海風を感じながら暮らしを営む人、連載ではそれぞれの物語に迫りたい。

 室蘭報道部の田中雅久が担当し、7月2日から連載の本編を始めます。
■「イタンキ」って? アイヌ語で「おわん」の意味
 イタンキ浜の砂浜を歩いていて、ふと疑問に思ったことがある。なぜ「イタンキ」という名前が付いたのだろうか。
 アイヌ語で「おわん」という意味の「イタンキ」。室蘭市民俗資料館によると、由来には複数の説があるという。
 有力な説は、巻き貝のツメタガイが作る「砂ぢゃわん」だ。ツメタガイは産卵時に卵と砂を粘液で固めて、茶わんをひっくり返したような塊を作る。ツメタガイは、イタンキ浜でも春から初夏にかけて見られるという。同館では砂ぢゃわんの実物を展示している。
 もう一つはクジラに由来する。アイヌ民族が浜でクジラが来るのを木のおわんを燃やして待ったが、クジラは現れず、餓死してしまったという悲しい話だ。
 一方、漢字表記も存在する。イタンキ浜近くの住民約80世帯が加入する「東町伊丹来町会」。なぜ「伊丹来」と書くのか、複数の住民に尋ねてみたが、「理由は知らないなあ」と苦笑い。室蘭市教委の学芸員、松田宏介さん(40)が「それは単なる当て字だと思いますよ」と説明してくれた。
 諸説ある名称の由来に思いを巡らせながら、浜を歩いてみては。新たな説が浮かぶかもしれない。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/319693
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