ナショナルジオグラフィック 2025.06.30
伝統的な旅を通じて幅広い文化的アイデンティティーを築いた先住民たち
先住民「フラニ」の一集団であるムボロロの10代の少女たち。カメルーン北部で、年に1度の遊牧の旅に参加している。イスラム教徒が多数を占めるフラニは、アフリカ中部と西部の約20カ国に暮らしている。彼らを結びつけるのは、何世紀も続いてきた牧畜の伝統だ。(PHOTOGRAPH BY ROBIN HAMMOND)
この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2025年7月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。
アフリカに暮らすフラニの人々は時代に合わせて伝統の形を臨機応変に修正しながらも太古から続く生活様式を守り続けている。
移動し続ける人々を取り巻く変化
サハラ砂漠の南縁部、サヘルと呼ばれる地域では、アフリカ西部と中部の約20カ国に暮らす何百万人もの人々が、共通の生活様式を守っている。毎年、季節の変わり目に、太古から続く遊牧の旅に出るのだ。セネガルの西岸からスーダンの東岸に至るサヘルは、年々気温が上昇し、乾燥が激しくなっている。そうしたなか、彼らは家畜を率いて、みずみずしい草が茂る、水場がある場所を目指す。さまざまなルートをとりながら、何百キロも歩くこともあるという。
この大移動を行う人々の大半には、共通するもう一つの重要な特徴がある。彼らは、伝統的な旅を通じて形成された幅広い文化的アイデンティティーをもつ、フラニと呼ばれる先住民なのだ。フラニの諸集団は大規模かつ多様で、新しい試みに活路を見いだそうとしているものも多い。
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