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夏は金色で冬は青くなるトナカイの目、どうなっている?

2022-12-24 | 先住民族関連
ナショナルジオグラフィック2022.12.24
極夜に適応して目の色を変える唯一の哺乳類、驚きの仕組みと能力
 トナカイに備わった驚異的な能力は、クリスマスイブにサンタクロースとプレゼントを乗せたそりを引いて空を駆け抜けることだけではない。
 極地に近い高緯度にすむトナカイ(Rangifer tarandus)は、太陽の光がほとんど当たらない冬の間、食料を探したり、捕食者から逃れたりしやすいように、目の構造を変化させることができるという。
 トナカイの目の奥には、輝板(タペータム)と呼ばれる鏡のような層がある。夏の間、それはターコイズブルーの筋が入った黄金色のオパールのように輝いているが、冬になると深い豊かな青色に変わる。こんな芸当ができる哺乳類はトナカイだけだ。
 なぜそのような現象が起こるのか、科学者たちは長年の間この謎に取り組んできたが、込み入った謎を解きほぐすには、宇宙物理学者、神経科学者、そしてスカンジナビアの先住民族であるサーミ族が長年かけて集めたトナカイの眼球が必要だった。
「大変珍しく、奇妙な、それでいて完全に理にかなった素晴らしい生物学的メカニズムです」。この研究論文の著者で、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの神経科学者であるグレン・ジェフリー氏は、そうコメントする。論文は、6月29日付けで学術誌「英国王立協会紀要B」に掲載された。
太陽が昇らない極夜に適応
 ノルウェーのトロムソや米アラスカ州ウトキアグビク(旧名称はバロー)などの北緯70度ぐらいになると、冬の間60日以上太陽が昇らない極夜が続く。トナカイは1日12~24時間、こうした深い薄闇の中で過ごしている。
「カナダのユーコン準州やマニトバ州北部でも、冬の間に昼夜の区別はありますが、ここにはそれがありません」と、トロムソにあるノルウェー北極大学サーミ研究センターの研究者ニコラス・テイラー氏は話す。「ここは、特別な環境なんです」
 極夜の薄明りは夏の昼間と比較すると10万分の1以下の明るさで、太陽からは青い光しか届かない。「空に巨大なフィルターがかかっているようです。そのフィルターが、オレンジの光を取り除いて、青色だけを通過させるわけです」と、論文の共著者で宇宙物理学者のロバート・フォスベリー氏は話す。
 薄明りに適応する動物はたくさんいる。多くの動物が持っているのが、光を吸収する網膜の後ろにある輝板だ。
 ほぼ暗闇のなかだけで生きていると、取り入れられる光子は一つも取りこぼしたくない。しかし、目の中に入った光子を網膜の光受容体がうまく受け止められないことがある。すると、その後ろにある輝板がそれを跳ね返し、もう一度網膜に吸収させることができる。ネコなど一部の夜行性の動物は、輝板の跳ね返しによって光受容体に当たる光を倍以上にすることができると、米テネシー大学ノックスビル校の動物眼科学者ブレイディー・フート氏は説明する。
 輝板の色は動物によって異なるが、多くの場合、黄味がかった金色か緑がかった色をしている。ネコやアライグマの目が暗闇で不気味に光るのはこのためだ。

ミナミジサイチョウ(Bucorvus leadbeateri)の目。(PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSCHWAGER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
 では、トナカイの輝板はなぜ冬になると青色になるのだろうか。それはおそらく、長い薄闇が続く冬期に、青やそれ以下の波長の範囲で光を最大限に吸収するためだと思われる。
 人間の目で見える色は、波長が400ナノメートル前後の青色から700ナノメートル前後の赤色までだが、トナカイはそれよりも短い波長の紫外線まで知覚できる。紫外線は人間の目には有害で、雪目などの損傷の原因となる。
 紫外線が見えることの利点は2つあると、フォスベリー氏は言う。まず、雪のなかで食べ物が見つけやすくなる。トナカイが冬に食べる地衣類は紫外線を吸収するため、暗闇で紫外線を跳ね返す雪のなかで目立って見える。また、トナカイを捕食するオオカミやホッキョクグマの毛皮も紫外線を吸収するため、やはり雪を背景にしたときにトナカイの目につきやすい。
 ほかにも極地にすむ動物たちがトナカイと同じような目を持っている可能性は高いが、米ダートマス大学の人類学者ナサニエル・ドミニー氏は「まだそこまで研究が進んでいません」と話す。
どうやって目の色を変える?
 次なる疑問が、少々難問だった。トナカイはどのようにして目の色を変えるのだろうか。その謎の解明に取り組んだのが、宇宙物理学者だ。
 北極圏の極夜における視覚状態を調べていたフォスベリー氏は、輝板が光の波長に合わせて自己調節していると考えた。
 フォスベリー氏とジェフリー氏は実験室で、サーミ族が集めたトナカイの眼球を解剖し、実験を行った。
 トナカイの輝板は、液体のなかに浮遊する極小のコラーゲンの線維が並んだ特殊な結晶(フォトニック結晶)でできている。解剖の結果、この結晶が夏と冬で形を変え、それによって輝板の色が変化していることが明らかになった。夏に採取された眼球は、液体に浮かぶ線維がまばらで、結晶は赤みがかった光をよく反射する。冬に採取した眼球には線維がぎっしりと詰まり、主に青い光や、それに近い紫外線までも反射できるようになる。
 暗闇でトナカイの瞳孔が開き、目の中を流れる水を排出する小さな出口がふさがれ、眼圧が上昇する。すると、輝板のコラーゲンが圧迫されて、水晶体の形が変わる。明るくなる夏は、瞳孔が元に戻るようだ。
「冬のトナカイの目は、夏の千倍以上敏感になります」と、テイラー氏は言う。
 しかし、その特徴的な適応がトナカイに害をもたらす場合がある。ジェフリー氏によると、昔からサーミ族がトナカイを放牧してきた地域に、今は高圧線が引かれている。そこから放出される紫外線が、トナカイの目には花火のように見え、トナカイたちを怯えさせるという。サーミ族は現在、トナカイの群れを守るため裁判で戦っている。(参考記事:「犬ぞりは誤り、観光業が作った間違いだらけの北欧サーミ文化」)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/122200601/?ST=m_news
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