BAZAAR 2025/07/09 BY MIO IWAKIRI
台湾、日本、スペイン、イタリア、ポストコロニアル、環境、ジェンダー、金属工芸、テキスタイル、映像、キュレーション、ドキュメンタリー。台湾原住民の一民族であるタロコ族の血を引くラバイ・イヨンが、さまざまな素材やメディアを縦横に用いて生み出す、深遠なるアートの物語。
PHOTO: ANPIS WANG
果樹園からの光がよく入るスタジオにて。
テキスタイルを用いたインスタレーションや、織物でオブジェを包んだ立体作品で知られるラバイ・イヨンは、台湾東部の花蓮の瑞穂(るいすい)駅にほど近い故郷、紅葉集落で、夫や幼い2人の息子たちと一緒に暮らしている。
日本統治時代に瑞穂と名づけられたこの一帯は、中央山脈を水源とする秀姑巒渓(しゅうこらんけい)が大きくカーブしながら太平洋につながる扇状地である。ラバイの父はタロコ族、母は閩南(びんなん)系の外省人、そして父方の高祖父は日本人だったという。
リン・ジエウェン(林介文)という漢名でも知られる彼女は、2005年にスペインに留学するとき、祖母と父の名を元に自分で原住民族名(ここでは先住民ではなく台湾での正式名称、原住民族を採用)をつけた。家族や昔からの友達は今も彼女のことをジエウェンと呼ぶが、留学時代のルームメイトであったイタリア人ドキュメンタリー映像作家の夫トマソ・ムッツィには、ラバイと呼ばれている。どちらも、彼女にとっては大切な自分の名前だ。
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https://www.harpersbazaar.com/jp/culture/arts/a65284304/labay-eyong-interview-250709-hbr/