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社説:COP10閉幕 実行せねば実効もない

2010-11-02 | 先住民族関連
(北海道新聞 10月31日)

名古屋市で開かれていた国連生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が終わった。
 医薬品などの利益を原料生物の原産国にも配分する初の国際ルール「名古屋議定書」を難航の末に採択し、2020年まで10年間に及ぶ生態系保全目標「愛知ターゲット」も制定した。
 途上国と先進国の対立を調整し、二つの難題を結論に導いた日本政府の努力を多としたい。
 ただ、名古屋での到達点は危うい妥協の上に成り立つ。日々多くの生物種が絶滅していく現状をみると、十分な内容とはいえまい。
 日本の議長国任務は、12年10月にインドで開かれる次回のCOP11まで続く。残された未解決課題の前進を図るとともに、条約未加入の米国を説得すべきだろう。
 名古屋議定書は《1》生物資源による利益を公平に配分する《2》先住民族の知識に基づく薬草の効能なども配分の対象とする《3》先進国政府は企業などの不正利用をチェックする-などを骨格としている。
 新型ウイルス発生などの緊急事態では、途上国も病原体の早期利用に考慮することを盛り込んだ。
 一方の生態系保全目標は「20年までに生物多様性の損失を止めるために効果的な行動を取る」との表現に落ち着いた。難航した数値目標も、陸域の17%と海域の10%を保存することで折り合った。
 会議を通じて鮮明になったのは、途上国の立場強化である。一カ国でも反対すれば採択できない全会一致原則のためだけではない。
 途上国は利益配分問題に限らず、保全目標設定でも、先進国から資金援助を引き出すことに成功した。多数を占める強みがみえる。
 結果的に、妥協の成否は資金問題に左右された感は否めない。豊かな生態系を自然破壊や地球環境悪化からどう守るのかという本来の趣旨からは、物足りなくも映る。
 ただ、角度を変えれば、途上国の真意も見えるのではないか。
 -持ち出された自国の資源が巨大な利益を生んでいる。植民地時代からの収奪に加え、今度は生物多様性のため開発を制御しろという。貧困の固定化を拒否する上で、この会議は大きな機会になる-。
 正当性はある。多様性保全と開発という矛盾は、技術と資金で克服していくしかないのだ。
 名古屋議定書は50カ国の批准から90日後に発効する。日本は真っ先の批准を目指してほしい。
 多様性保全も、目標の採択で成果が上がるわけではない。実効を得られるかどうかは、関連国内法整備など各国の実行にかかっている。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/257902.html
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