<日テレNEWS24 2013年7月12日 16:56 >
ブラジルでは、サトウキビなどを原料とする“バイオ燃料”の拡大が様々な問題をもたらしている。その中のひとつ、先住民の生活への影響を取材した。
1970年代のオイルショック以降、ブラジルはサトウキビによるバイオ燃料を積極的に推進してきた。今ではすべてのエネルギーの約15%を、サトウキビがまかなうまでに普及した。しかし、二酸化炭素の排出が少なく、環境に優しいこのエネルギーが、いま、深刻な問題を引き起こしていた。
ブラジル政府の特別な許可をとり、ブラジル中西部の南マットグロッソ州にある先住民が住む集落を訪ねた。あいさつを快く返してくれたのは、先住民・グアラニー族のリーダーであるラディオ・ヴェロンさんだ。69家族が暮らすこの集落の“ある場所”へ案内してくれた。
「今ここで遠くまで見えるすべての土地が、本来は私たちの土地なのです。本当に悲しくなります」
ヴェロンさんが見つめる先ではトラクターが地面を耕し、バイオ燃料の原料となるサトウキビや大豆の畑を広げているまっただ中だった。
かつて“森の民”と呼ばれたグアラニー族は、約500年前にブラジルにポルトガル人が来るはるか前から、森で暮らし、森と共に生きてきた。しかし、ブラジル政府は先住民の存在を無視して、土地をポルトガル人に分け与えたため、グアラニー族は土地を追われ、狭い集落での暮らしを余儀なくされた。2010年にようやく政府は、9700ヘクタールの広大な土地がグアラニー族のものだと認定したが、バイオ燃料の需要の急増と共に畑を拡大してきた農場主は、土地の受け渡しを拒み、現在も裁判で争われているのだ。2001年、土地争いの中で先住民のリーダーだったヴェロンさんの父親が、農場主の関係者から殺害されるという事件も起きた。それでもヴェロンさんはこう語る。
「殺されるのは怖くない。怖いのはどんどん森林が伐採されて、私たちの聖なる土地が失われることです」
土地を追われたグアラニー族は厳しい生活を強いられていた。グアラニー族の女性・フェリパさんは家の周りにイモを植え、それを売って収入を得ているという。家の中を見せてもらうと、そこにあったのは米だった。1か月に1度、政府から米や豆が配給され、それで生活をしているのだ。
「食べるものが十分でなく子供たちが飢えて、お腹を空かせているのです」
フェリパさんは現状をこう語ってくれた。家族6人が電気の無いこの家で暮らすが、配給だけでは足りず、中には栄養失調になる子供もいるという。ブラジル政府は、こうした土地争いをどう見ているのだろうか。国立先住民保護財団のニシジマ所長は「一番の問題は、政府が地主に補償するためのお金を払えないことです。私たちにできることは限られています」と語る。バイオ燃料を推進する政府の政策が、結果的に先住民の暮らしを追い詰め、政府がその生活を支援するという皮肉。ヴェロンさんは、グアラニー族の悲痛な思いを訴える。
「私たちは、ずっと政府の援助に依存して生活していきたくないのです。ちゃんと畑を作り、自分たちの力で生活していきたいのです」
世界に誇る“環境に優しい”エネルギーがもたらした思わぬ影響。ブラジルは、いま、大きな課題に直面している。
http://news24.jp/articles/2013/07/12/10232179.html
ブラジルでは、サトウキビなどを原料とする“バイオ燃料”の拡大が様々な問題をもたらしている。その中のひとつ、先住民の生活への影響を取材した。
1970年代のオイルショック以降、ブラジルはサトウキビによるバイオ燃料を積極的に推進してきた。今ではすべてのエネルギーの約15%を、サトウキビがまかなうまでに普及した。しかし、二酸化炭素の排出が少なく、環境に優しいこのエネルギーが、いま、深刻な問題を引き起こしていた。
ブラジル政府の特別な許可をとり、ブラジル中西部の南マットグロッソ州にある先住民が住む集落を訪ねた。あいさつを快く返してくれたのは、先住民・グアラニー族のリーダーであるラディオ・ヴェロンさんだ。69家族が暮らすこの集落の“ある場所”へ案内してくれた。
「今ここで遠くまで見えるすべての土地が、本来は私たちの土地なのです。本当に悲しくなります」
ヴェロンさんが見つめる先ではトラクターが地面を耕し、バイオ燃料の原料となるサトウキビや大豆の畑を広げているまっただ中だった。
かつて“森の民”と呼ばれたグアラニー族は、約500年前にブラジルにポルトガル人が来るはるか前から、森で暮らし、森と共に生きてきた。しかし、ブラジル政府は先住民の存在を無視して、土地をポルトガル人に分け与えたため、グアラニー族は土地を追われ、狭い集落での暮らしを余儀なくされた。2010年にようやく政府は、9700ヘクタールの広大な土地がグアラニー族のものだと認定したが、バイオ燃料の需要の急増と共に畑を拡大してきた農場主は、土地の受け渡しを拒み、現在も裁判で争われているのだ。2001年、土地争いの中で先住民のリーダーだったヴェロンさんの父親が、農場主の関係者から殺害されるという事件も起きた。それでもヴェロンさんはこう語る。
「殺されるのは怖くない。怖いのはどんどん森林が伐採されて、私たちの聖なる土地が失われることです」
土地を追われたグアラニー族は厳しい生活を強いられていた。グアラニー族の女性・フェリパさんは家の周りにイモを植え、それを売って収入を得ているという。家の中を見せてもらうと、そこにあったのは米だった。1か月に1度、政府から米や豆が配給され、それで生活をしているのだ。
「食べるものが十分でなく子供たちが飢えて、お腹を空かせているのです」
フェリパさんは現状をこう語ってくれた。家族6人が電気の無いこの家で暮らすが、配給だけでは足りず、中には栄養失調になる子供もいるという。ブラジル政府は、こうした土地争いをどう見ているのだろうか。国立先住民保護財団のニシジマ所長は「一番の問題は、政府が地主に補償するためのお金を払えないことです。私たちにできることは限られています」と語る。バイオ燃料を推進する政府の政策が、結果的に先住民の暮らしを追い詰め、政府がその生活を支援するという皮肉。ヴェロンさんは、グアラニー族の悲痛な思いを訴える。
「私たちは、ずっと政府の援助に依存して生活していきたくないのです。ちゃんと畑を作り、自分たちの力で生活していきたいのです」
世界に誇る“環境に優しい”エネルギーがもたらした思わぬ影響。ブラジルは、いま、大きな課題に直面している。
http://news24.jp/articles/2013/07/12/10232179.html