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先住民族関連ニュース

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<訪問>「新しいアジアの予感」を書いた 安里英子(あさと・えいこ)さん

2019-03-18 | ウチナー・沖縄
北海道新聞 03/17 05:00
沖縄のアイデンティティー自問
 日本にとって沖縄とは何か。そうした問いを繰り返しながら、基地が過度に集中する沖縄の怒りや悲しみ、琉球孤の精神世界、戦時下の朝鮮人強制連行などに向き合ってきた。
 敗戦から3年後、米軍占領下の那覇市・首里で生まれた。かつての琉球王朝のお膝元で、首里城跡には琉球大学があった。10代のころは「60年安保闘争」の真っ盛り。近所のキャンパスから学生運動のざわめきが伝わってきた。文学少女だった著者は愛読する太宰治と決別した。
 「沖縄が置かれている厳しい状況と合わないわけ。それからは社会科学への関心が高まっていきました」
 太平洋戦争末期、沖縄は地上戦の戦場になり、住民の4人に1人が犠牲になった。戦後は銃剣とブルドーザーで土地を奪われ、基地に占有された。女性への強姦など米軍人の犯罪が連日のように起こった。
 「沖縄で生きる自分自身のアイデンティティーが分からなくなったんです。アメリカでもなさそうだし、復帰運動では日本へ向かっている。政治的な矛盾の中で悩みました」
 首里は琉球の権力を象徴する場所だった。そのため、1879年(明治12年)の明治政府による琉球併合後は文化的な抹殺が首里から始まった。20代後半になった著者は沖縄的なものを求め、ミニコミ誌「地域の目」を発行した。創刊号のテーマに「戦後自治」を選び、沖縄生まれの書き手として聞き書きによる証言を重ねていった。
 沖縄戦で生き残った人たちは戦後、収容所に入れられ、村に戻ってみると家々は金網に囲まれて基地に取り込まれていた。だから、基地の周辺にテント小屋を作り、それが次第にかやぶきやトタン、瓦ぶき、コンクリートの家へと変化していった。
 住民がいち早く力を合わせて集落ごとに公民館を建て、相互扶助の拠点にした。同時に伝統信仰の場「御嶽(うたき)」も精神的よりどころとして再生されていった。「復帰後も変わらぬ現実に自分が向かえば向かうほど、私は沖縄の精神世界を追求していきました」
 本書にはこれまで発表した論文やエッセーなどを収録した。琉球の聖地を巡り、古層に触れた後は、アイヌ民族、台湾、朝鮮半島とたどった。アイヌ民族の萱野茂さんやチカップ美恵子さん(いずれも故人)との出会い、魂の交流が語られる。
 書名は「新しいアジアの予感」。いま沖縄で暮らし、直観的に“風”を感じている。「朝鮮半島は統一へ進むと思う。その時に日本はどう向き合うのか。それが問われているし、変わらざるを得ないでしょう」
編集委員 伴野昭人
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/287438
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