ムービーウォーカー11/10(金) 20:30配信
ディズニー創立100周年の記念作『ウィッシュ』へと至るディズニーヒロインたちが歌って来た名曲をプレイバック!
ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』(12月15日公開)が、いよいよ全貌を現しつつある。本作は、願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャが、魔法で願いを叶えてくれるはずの王様が、みんなの願いを支配しているという衝撃の真実を知ってしまい、みんなの願いを取り戻すため立ち上がる世紀のドラマティック・ミュージカル。
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かつてのディズニー・アニメーションを思い起こさせるクラシックなセル画調の2Dアニメーションと、最新の3DCGアニメーションが融合した最新技術による新しい映像美もさることながら、公開に先駆けて配信された劇中歌「ウィッシュ~この願い~」も、すでに巷で“神曲!”と話題を呼び、ファンの期待をますます高めている。
字幕版でヒロインのアーシャを演じるのは、アリアナ・デボーズ。彼女は『ウエスト・サイド・ストーリー』(20)で第94回アカデミー賞助演女優賞を受賞したばかりの若き注目株で、演技力もさることながら、力強く情感豊かな歌声が魅力だ。
「ウィッシュ~この願い~」をはじめとした『ウィッシュ』の音楽を担当するのは、新世代の作曲家ジュリア・マイケルズと、グラミー賞受賞プロデューサー兼ミュージシャンのベンジャミン・ライス。マイケルズは、第60回グラミー賞主要2部門にノミネートされたソング・ライター兼アーティストであり、ジャスティン・ビーバー、エド・シーランら有名アーティストへの楽曲提供でも知られる。壮大なメロディに、デボーズの圧巻の歌声が加わる相乗効果で、歌詞のとおり“どんな試練が待ち受けても乗り越えてみせる!”と、思わず心を熱くさせられる一曲となっている。
そう、いつの時代もディズニーアニメーションのヒロインが歌う名曲は、多くのファンの心を動かして来た。その時代が持つムードや女性の心の内を映すかのように、観客はヒロインに心を寄せ、あるいは自分を重ね合わせることで夢を見て、気持ちを奮い立たせる。世界初のフルカラー長編アニメーションとして誕生した『白雪姫』(37)から最新作『ウィッシュ』にいたるまで、まさに時代を映す魅力的なヒロインたちが歌う名曲を振り返り、その変遷をたどってみよう。
■三大プリンセスによる、出会いを心待ちにする気持ちを綴った楽しいメロディ
『白雪姫』の代表曲「いつか王子様が」は、『ダンボ』(41)や『バンビ』(42)の音楽も担当したフランク・チャーチル作曲によるもの。柔らかで美しいメロディには時おり、白雪姫の人柄を感じさせるようなユーモアも混じり込み、その後にジャズ・スタンダードになるほど広く愛されてきた名曲だ。いまも色あせることのない美しい旋律は、聴くものを存分にうっとりさせてくれる。その一方、“いつの日にか王子様が来てくれる。その日を私は夢に見る”という歌詞は、まさに当時の女性の価値観や世間が思う幸せな女性像を反映していて興味深い。
『白雪姫』に続くディズニー三大プリンセス作品の一つ、『シンデレラ』(49)の「夢はひそかに」はしっとりエレガントな一曲。継母や義理の姉たちにいじめられるシンデレラが、“夢を信じていればいつか叶う”、“信じ続ける心が大事”と自分に言い聞かせるように歌う歌詞は、シンデレラのポジティブさを改めて気づかせてくれる。この楽曲を通じて打ちだされたメッセージは、まさに最新作『ウィッシュ』に至るまで変わらないこと、置かれる立場や背景は違っても“強い願いの力”をずっと描き続けて来たことに驚かされる。
三大プリンセスの3人目は『眠れる森の美女』(59)。オーロラ姫が歌う「いつか夢で」も、会ったことのない王子様に向け“あなたをいつも夢に見て”と、運命の人に想いを託しているが、動物たちと楽しそうに踊りながら歌う楽し気なメロディラインは、いかにも耳をくすぐる。
■『リトル・マーメイド』に『ムーラン』。様々なバックグラウンドのヒロインたちが己の道を切り拓く!
人々を魅了する新たなディズニー・ヒロインが登場するのは、1989年まで待たねばならない。“ディズニー・ルネサンス”と呼ばれた1989年以降の第二黄金期には、数々の名作が生まれると同時に、意識的に様々な種や立場、違う世界に生きる多様なヒロインを続々と登場させ、新たな時代を切り開いた。
『リトル・マーメイド』(89)では、海の王女アリエルが陸の世界――まだ見たことのない外の世界へ憧れる気持ちを込め、切々と「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌い上げる。『美女と野獣』(91)、『アラジン』(92)などを含め、ディズニー音楽の一時代を築いたアラン・メンケンによる美しいメロディには、第一次黄金期の楽しく楽観的な曲調とは一線を画し、哀愁やせつなさが色濃く漂い、心を揺さぶられずにいられない。
『ポカホンタス』(95)のヒロイン、アメリカ先住民族ポカホンタスが歌う「カラー・オブ・ザ・ウィンド」は、さらにシリアスな曲調に乗せ、自然の美しさや豊かさ、その姿や大切さを謳い、それに気付かない相手に、もっとよく見てと訴えかける内容になっている。さらに初のアジア人がヒロインとなった『ムーラン』(98)における「リフレクション」は、ムーランが自分自身や自分の生き方を深く見つめる内容で、やはり切ないメロディラインがギュッと胸を締め付ける。
■『塔の上のラプンツェル』や『アナ雪』まで。さらなるパワーにあふれた名曲たち
自分の人生を誰かに委ねることなく、自分の望みや価値観に従って正直に生きようともがく姿を歌い上げた“ルネサンス期”から、さらに一歩踏みだした2000年以降は、すでに腹を決めたあとの、どこか吹っ切れたようなパワーが楽曲にみなぎり、再び明るくポジティブな曲調へと転調する。しかしのんびり楽観的というよりは、ギュッと決意の詰まったパワフルな楽曲が多い。
『塔の上のラプンツェル』(10)では、初のCGアニメーション・プリンセスとなったラプンツェルが、「自由への扉」を歌うどこかコミカルで楽しいシーンが印象的だ。塔から出られない生活に飽きたと歌いながら、自棄になることなく、そんな生活さえも楽しんでいる風でもあり、メロディには外の世界への憧れや期待が膨らむ明るい兆しが差し、これからの展開を予感させてワクワクさせる。さすが、ディズニー音楽を知り尽くしたアラン・メンケンと思わざるを得ない一曲。
そして決定打は、エポックメイキング的な作品としか言いようのない『アナと雪の女王』(13)の登場だ。王子様ではなく姉妹の絆や助け合いを物語のベースに置き、エルサが歌う「レット・イット・ゴー」は、各国それぞれの歌手が歌い世界的な大ヒット曲に。内容はいまさら言うまでもないが、恐れずに自分を解放し、ありのままの自分で生きていこうと、男女問わず悩める誰かの背中を押してくれる応援歌だ。日本でも社会現象を巻き起こし、公開翌年の第86回アカデミー賞歌曲賞を受賞している。
雪の世界から一転、南太平洋の島を舞台にした『モアナと伝説の海』(16)の「How Far I'll Go」は、シンプルなギター伴奏で歌い上げられる素朴な歌声が画期的でもあり、まさに知らない世界へ飛びだすのだという決意表明のような楽曲だ。ディズニー・ヒロインたちはもう誰かを待つことなく、自分自身の力で人生を切り拓くことを恐れない。
そしてついに、ディズニー・アニメーション最新作『ウィッシュ』へとたどり着く。長きにわたり、時代に寄り添い、人々を勇気づけてきたディズニー・ヒロインの名曲たち。願い星に選ばれたニューヒロイン、アーシャが起こす奇跡を目撃するまで、あと少し!時代を少し先から先導してくれる美しく力強い歌声に心揺らす日は、もう目の前だ。
文/折田千鶴子
https://news.yahoo.co.jp/articles/30945597261a4a82be4818ea95a377925931dfdb