毎日新聞 2024/10/17 11:30(最終更新 10/17 16:41) 740文字
星野リゾート(長野県軽井沢町)は17日、2028年に米東部ニューヨーク州で温泉旅館を開業すると発表した。記者会見した星野佳路代表は「世界のホテル運営会社の産業の中心は北米。星野リゾートの20~30年後のことを考えたときに、北米に足がかりを作っていくことがサステナビリティー(持続可能性)にとって大事だ」と狙いを語った。同社によると、日本のホテル会社による米国での温泉旅館の開業は初の取り組みだという。
日本のホテル業界は1980年代に北米進出に挑戦したが、後に撤退が相次いだ。星野氏は「バブル経済のときに西洋型ホテルを展開しようとして、うまくいかなかった背景がある」と指摘。その失敗からの学びを踏まえ、日本文化を反映したコンセプトの本格的な温泉旅館の開業を長年計画してきたという。
開業するのは、ニューヨーク市の中心街、マンハッタンから車で約3時間半の距離にある温泉地シャロンスプリングス。古くは先住民が湯治で鉱泉を利用した地ともいわれ、19世紀半ばにはリゾート地として開発された。しかし、20世紀に入って飛行機による旅行が盛んになると観光地として衰退し、活気を失っていったという。
数々の旅館や温泉地を再生してきた星野氏は「ここは100年前に集客のピークを通り越していて衰退の歴史がある。星野リゾートにとって本当に良い場所」と自信をのぞかせ、「日本に似た気候があり、冬には雪見露天風呂、秋には紅葉、春には新緑があり、夏にはかき氷を出せる」と可能性に期待した。
また、客層については「日本からの旅行者はターゲットにしていない。北米の特にニューヨークやボストンに住む方の2泊旅、3泊旅を狙う。温泉旅館をしっかり表現し、主客対等のサービスを提供していきたい」と話した。【佐久間一輝】