経団連タイムス 2023年11月23日 No.3614
-ABAC日本委員が岸田首相および上川外相、西村経産相に建議
APEC唯一の公式民間諮問団体であるABAC (APECビジネス諮問委員会)はこのほど、2023年の「APEC首脳への提言書」を取りまとめた。ABAC委員に任命されている國分文也氏(丸紅会長)、鈴木純氏(帝人シニア・アドバイザー)、中曽宏氏(大和総研理事長) 、代理委員の今村卓氏(丸紅執行役員)、坂口利彦氏(帝人ミッション・エグゼクティブ)が、10月23日に上川陽子外務大臣、西村康稔経済産業大臣、11月7日に岸田文雄内閣総理大臣を訪問し、それぞれ同提言書を建議した。
岸田首相からは、「ファイナンスや各種技術を通じてエネルギートランジションに向けた努力を続け、AIについても信頼できる国際的なルールづくりを進めていきたい。今回の提言を念頭に置き、11月のABAC委員との対話をはじめAPEC首脳との意見交換に臨みたい」との意向が示された。
ABACは、1995年のAPEC大阪会議においてAPEC首脳がビジネス界の声を直接聴くための団体として設立が提唱され、96年に発足した。APECに参加する21カ国・地域の各首脳が、それぞれの国・地域のビジネス界の代表者として指名したABAC委員(60人、2023年11月現在)により構成されている。
23年のABACは米国が議長国を務め、全体テーマ「公平(Equity)、持続可能性(Sustainability)、機会(Opportunity)」のもと、「経済統合」「持続的成長」「デジタルとイノベーション」の三つの作業部会、「金融」「包摂」の二つのタスクフォースごとに優先課題を設け、4回の全体会議を通じて提言書を取りまとめた。
23年の提言書の主な内容は以下のとおり。
○ 経済統合
アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に向けた具体的措置の実施、ルールに基づく多角的貿易体制の支持、サプライチェーンの強靭性と連結性の強化等
○ 持続的成長
野心的な気候変動対応策の実施、公正で現実的かつ野心的で持続可能なエネルギートランジション推進、持続可能な食料安全保障の確保等
○ デジタルとイノベーション
責任あるAIの奨励(生成AI、大規模言語モデル、汎用AI、デジタルヘルスへの適用)、越境データフローの円滑化等
○ 金融
トランジション・ファイナンスを支援する相互運用可能な金融市場の整備、相互運用可能なホールセール型中央銀行デジタル通貨(wCBDC)の開発基準の活用等
○ 包摂
経済的潜在力を発揮しきれていない層(女性、中小零細企業、先住民族企業)に対する貿易の包摂性増進、STEM(科学・技術・工学・数学)分野への女性の進出増進等