goo blog サービス終了のお知らせ 

先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

プエルトリコ、古代のペトログリフと伝承に出合う旅

2022-11-27 | 先住民族関連
ナショナルジオグラフィック2022.11.27
チュパカブラよりすごい? 先住民タイノ族の歴史に触れるルート

タイナ・ルートでは、儀式の中心地や墓などを通じてプエルトリコの文化の起源を垣間見ることができる。写真は北部アレシボにある、ペトログリフ(岩面彫刻)が多く刻まれた洞窟。(PHOTOGRAPH BY RUSSELL KORD, ALAMY STOCK PHOTO)
 1990年代に未確認動物チュパカブラが報告されたカリブ海の米国自治領プエルトリコ。島の緑豊かな高地は、この伝説の吸血獣を探す人々にとっては格好の場所だ。しかし、これらの高地を巡る「タイナ・ルート」には、伝説をはるかに超える歴史が隠されている。(参考記事:「UMA“チュパカブラ”の正体とは?」)
 タイナ・ルートは、プエルトリコ北岸のアレシボから南岸のポンセまで、二つの主要都市をつなぐ全長70キロのルート。海辺の洞窟に隠された古代のペトログリフ(岩面彫刻)から、山中の神聖な儀式場まで、島の先住民タイノ族の文化をたどることができる。
 タイノ族は、南米から移住してきたアラワク語を話す人々の子孫だ。かつてはスペインによる征服で滅亡したと考えられていたが、現在でもカリブ海からコロンビア、ベネズエラに至る地域で存続している。ユカ(イモの一種)に肉と野菜を詰めた料理「パステレス」や、リュウゼツラン(竜舌蘭)を用いた伝統的なハンモック編みなど、タイノ族の遺産はプエルトリコのアイデンティティーに組み込まれている。プエルトリコ人の自称である「ボリクア」も、タイノ族の言葉「ボリンケン」に由来している。
 タイノ族は「生きている世界」を尊重しており、そのやり方を私たちが理解することが重要だと、米スミソニアン協会カリブ海先住民遺産プロジェクトの研究者クリスティーナ・ゴンザレス氏は、米スミソニアン国立アメリカ・インディアン博物館誌「American Indian」の2018年秋号の記事に書いている。(参考記事:「歴史から抹殺されたカリブのタイノ族、復活の肖像、写真8点」)
 2016年以来、考古学者やプエルトリコ文化研究所、地元の保護活動家が協力して、タイナ・ルートを活用することでこの遺産を広めようとしている。旅行者がタイノ文化に浸る機会も増えつつある。以下では、この島を形作った風習に触れられる場所を紹介する。車を借りて自分のペースで巡ってもいいし、ツアーに参加するのもよい。ひょっとしたら道中でチュパカブラに出会えるかもしれない。
自然と聖なる空間
 タイナ・ルートには、プエルトリコでも特に多くのペトログリフが集中している。7世紀から15世紀にかけて彫られた顔や動物、神の像は、魅力的なシンボルであるだけでなく、タイノ族の歴史を深く理解させてくれる。アレシボ北部にある海食洞「クエバ・デル・インディオ」やポンセ近くの儀式場など、ルートの両端にある海岸沿いの遺跡は訪れる価値があるが、中間の緑豊かな地帯にも、タイノ族の精神的伝統の本質が記録されている。
 ルートの中ほどに位置する都市ウトゥアードの西にある「カグアナ儀礼先住民遺産センター」には、ペトログリフが刻まれた岩が囲む中庭が多くある。並ぶ石の中には腰の高さ以上のものもある。この広場は「バテイエ」と呼ばれ、儀式での踊りや礼拝活動、儀式的な球技のために使われた神聖な場所と考えられている。
「タイノとは直訳すれば『善良な人々』という意味です」と、タイノ族統一連盟(UCTP)のロベルト・ムカロ・アグエイバナ・ボレロ会長は言う。「交流のしかたや、タイノ族が参加する儀式が、彼らを『タイノ』にしたのです」
 カグアナのペトログリフは、アンティル諸島の中で最も鮮明なものの一つでもあると、プエルトリコ大学考古学研究センターのイボンネ・ナルガネス所長は説明する。「このペトログリフは、非常に古くて複雑な神話の伝統を暗示していて印象的です」と氏は言う。
 なかでも有名なのは、しゃがんだアタベイの像で、創造の母および地球の意識として描かれている。人目を引くアタベイの像は、タイノ族にとって、すべてのものが生きており、つながっていることを思い出させてくれる重要な存在だ。
 ウトゥアードの東には、タイノ族長ハユヤにちなんで名付けられたハユヤ地方があり、プエルトリコにおけるタイノ族の中心地として知られている。ここは、タイノ族が崇拝する山であり「3つの峰」を意味するトレスピカチョスがそびえ立つ、タイナ・ルートの中で最も人気のある場所の一つだ。
 標識に沿って歩くと、「ラ・ピエドラ・エスクリタ(刻まれた石)」と呼ばれる、ペトログリフで覆われた高さ約4メートルの巨石が見えてくる。魅力はその大きさや、膨大な数のペトログリフだけではない。この石はサリエンテ川の中にあるのだ。訪れればタイノ族が尊重している世界を感じることができるかもしれない。
 同じくハユヤには「セミ博物館」がある。この博物館では、祖先の守護霊を具現化した霊的な像「セミ」を展示している。聖なるトレスピカチョスの3つの峰のように、ほとんどのセミも3つの頂点をもち、創造や、生者と死者の精神的な世界の重なりを表している。博物館の建物自体も3つの頂点をもつセミに似た形だ。
 タイナ・ルートは、現在タイノ族が多く住むインディオス地方の近くにあるポンセで終わる。カグアナに匹敵する規模の「ティベス儀礼先住民センター」では、発掘調査が続けられている。これまでに西暦25年以降の遺物が考古学者によって発見されており、敷地内の博物館で見学することができる。
民間伝承、霊、伝説
 1995年にプエルトリコが国際的なチュパカブラ探しの中心地になるずっと前から、吸血鬼や悪霊はこの「魅惑の島」に出没していた。タイノ族は「フピア」と呼ばれる死者の霊を信じていた。この霊はフクロウやコウモリ、人間の姿に変身し、ときに邪悪な目的をもって夜に姿を現す。1990年に出版された小説『ジュラシック・パーク』では、謎の死を遂げた青年を襲った犯人としてフピアの名が挙がった(実際には恐竜の仕業だった)。
 1975年、プエルトリコ西部のモカ付近で、コウモリに似た人型の吸血動物が家畜を殺したと報告された。2018年には、北部バルセロネタ付近で新たな吸血の未確認動物「ガーゴイル」が出現した。この2本足で翼をもつ捕食者は、チュパカブラと同じように硫黄のにおいがしたという。人々がこれらの獣を信じようが信じまいが、チュパカブラの伝説はこの山々に根付き、今でも民間伝承の魔法が鳴り響くこの土地の歴史に加わったのだ。
未来の可能性
 ツアー会社イスラ・カリベの歴史ツアーガイドのメリーナ・アギラル氏によると、500年以上前のプエルトリコの史跡の存在に大半の観光客が驚くという。「プエルトリコに来て目にしたものに驚くだけでなく、そんなものがここで見られるということ自体に驚くのです。しかも、地中にはまだ多くのものが隠されています」
 未発掘の遺跡の調査やさらなる修復作業には、まだまだ多くの資金が必要だが、2017年のハリケーン「マリア」と2022年の「フィオナ」の壊滅的な影響により、インフラの発展が妨げられている。タイナ・ルート沿いのすでに孤立している地域は、電気・ガス・水道などの復旧と被害の除去が最も遅れている地域の一つだ。
 それでも発展は可能だ。特にタイノ族の活動家たちは、先祖から受け継いだ知識を遺跡に取り入れるために、遺跡の共同管理を求めている。「私たちが何者か、いかに遺産を展示すべきかについて、どうして私たちの遺産と何も関係のない人たちが指図できるのでしょうか?」とアグエイバナ・ボレロ氏は言う。「私たちはタイノ族として、土地と先祖に対して義務と責任を負っていると感じています」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/111500525/
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウクライナの旗はメイン州全... | トップ | ソロプチ大分―みどり、ネパー... »
最新の画像もっと見る

先住民族関連」カテゴリの最新記事