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ベネズエラ南部ボリバル州「インディヘナ大学」 後世につなぐ先住民族の文化

2011-06-21 | 先住民族関連
msn産経ニュース 011.6.20 09:00

■シーン1
 狩猟採取生活をいまも続ける「ヤノマミ」をはじめ、数えきれいないほど多くの先住民族が暮らすベネズエラ南部ボリバル州に、世界的にも珍しい、先住民族が学ぶための大学「インディへナ(先住民)大学」が設置されている。
 ロイター通信によると、インディへナ大学に通学しているのは、少なくとも44の民族に属する学生計約100人。授業では、口承で伝えられてきた先住民族の歴史などを後世に残すため、村の古老から集めた情報や授業で学んだ内容をコンピューターに入力し、本に記録する作業が続けられている。
 また、法律や科学技術などを学ぶ授業もある。領地、貧困、文化・アイデンティティー…。先住民族が現代社会が生きていくために、直面するさまざまな問題を自分たちの力で解決できる能力を養成することが目的だ。先住民族のアイデンティティーについて、民族内の学生同士で討論することもあるという。
 「この大学こそが、われわれの伝統文化を守るとりでだ」
 インディへナ大学に通うナジルさん(23)は、先住民族の文化について誇らしげに語った。だが、文明化の波は先住民族の暮らしにも確実に押し寄せており、ナジルさんの思いを貫くことは簡単なことではない。

■シーン2 近代化と伝統のはざま 「英知の宝庫」を記録に
 「ヤシの葉でつくられた家の屋根」「ベッドはハンモック」「料理を温める手段はたき火」「木の枝から川に飛び込んで遊ぶ」…。
 ベネズエラの先住民族は何千年もの間、外界から隔絶された密林の中で独自の文化をはぐくんできた。
 だが、先住民族の救済を公約に掲げたウゴ・チャベス大統領(56)が就任した1998年ころから、先住民族の文化に急激な変化が表れ始めた。
 政府が先住民族に対する物資や資金の支援を行うようになったため、“文明生活”に感化される先住民族が増加。パスタや粉末食料を食べるようになったり、携帯電話が普及するなど暮らしに変化が広がった。
 さらに、先住民族が住む村では、政府の支援策に伴う生活の近代化を支持する住民が増え、伝統的な暮らしを重んじる古老の影響力が弱体化している。
 「村の古老は先住民族の伝統を受け継いできた“英知の宝庫”だ。彼らの英知を早急に記録に残さなければ、先住民族の文化が失われてしまう」。ロイター通信の取材に答えたインディへナ大学の卒業生、エマハユミ・トレスさん(27)は危機感をにじませた。
 だが、先住民族が住む村で看護師を務めるクシェワさんは、「村には交通機関もなければ、まともな医療機械もない。誰かが病気になったら、大きな病院へ搬送することもできない」と話し、伝統的な生活の維持には限界があると指摘する。
 実際、先住民族としての生活に見切りをつけ、安定した生活を求めて都市に引っ越す先住民族も多い。文明的な生活を経験した先住民は、二度と村に戻ることはない。
 「伝統的な先住民族の生活習慣を壊さない方法だけでなく、(村に住む先住民族の)生活が改善する方法を模索しなければいけないのかもしれない」。先住民族の男性の一人は、静かにつぶやいた。(EX編集部/撮影:ロイター/SANKEI EX PRESS)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110620/amr11062009020004-n1.htm

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