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歌う、カネトの半生 アイヌ民族の測量技師 来春公開へ合唱団練習

2011-03-06 | アイヌ民族関連
東京新聞 2011年3月6日

 愛知、長野、静岡県境の険しい山岳地を走る飯田線を建設したアイヌ民族の測量技師川村カネト(1893~1977)の半生を描いた合唱劇が来春、初めて首都圏で公開される。公募で集まった合唱団の練習は新宿区で始まっているが、多文化共生のメッセージを劇に込めようと、実行委員会では在日外国人らの参加を呼び掛けている。 (松村裕子)
 カネトは、北海道旭川市でアイヌの名門に生まれた。地元で鉄道の測量に携わり、断崖絶壁が続く天竜川の峡谷での飯田線建設では現場監督を務めた。日本人に測量や工事の引き受け手がない危険な場所で、川に落ちかねない状況や、生き埋めにされかけた民族差別を乗り越え、昭和初期に仲間と共に難工事を完成させた。
 合唱劇は、児童書「カネト」(沢田猛著)を基に、作曲家藤村記一郎さんが作った全二十七曲で構成。天竜峡谷での測量や工事などを、劇を交えた歌でつづる。二〇〇〇年に愛知県で初演され、飯田線沿線や、北海道で繰り返し上演されている。
 首都圏での公演は、アイヌ文化の継承に携わる詩人港敦子さん(39)=府中市=が、〇八年に「川村カ子トアイヌ記念館」(旭川市)で藤村さんと出会ったことから実現に向け動きだした。カネトの生き方に感動した港さんの呼び掛けに、天竜峡谷のある長野県飯田市出身の大学講師丸山百合さん(44)=狛江市=らが応じ、実行委員会を組織した。
 公演は来年三月三十一日に立川市市民会館で開く予定。歌の数が多く、今年一月から合唱の練習を始めた。現在、約七十人が参加している。本番では子どもを含む百人規模の合唱団を目指しており、首都圏に住むアイヌや、練習場所の新宿に多い中国人や韓国人らの参加も歓迎している。
 丸山さんが「飯田市で上演されるまで知らなかった」と言うように、大事業を成し遂げたカネトだが、ゆかりの地でさえ知名度は低い。港さんは「民族の壁を越えて共に生きることは現在に通じる課題。カネトが民族差別に負けずに、誰とでも力を合わせて工事を成し遂げたことを伝えたい」と話す。合唱の参加希望者は事務局=電080(6546)5422=へ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110306/CK2011030602000028.html

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