武蔵野の茅葺民家が、
石神井池の傍らに移築されている、
北風を防ぐ防風林が植えられてはいるが、
風は家の中を通り抜けて行く、
夏向きに建てられた多くの日本家屋に、
弱い陽が注ぐ、
大きな茅葺の屋根が家を包む、
火の消えた竈、
三和土の土間から人が消えて久しい、
人が生活していた時には、
切られた囲炉裏には、
終日火が焚かれ、
部屋は暖く、
煙は屋根裏を伝い害虫を駆除する、
保存のために時折、
柴が焚かれるという、
梁は黒ずみ力強く家を支える、
陰影の美を、
欄間と透かし戸が産み出す、
ガラスの無かった時代には、
障子と襖と板戸、
そして雨戸、
蝋燭と、
囲炉裏の火と、
竈の火、
ふとその様子を思う、
縁側から外を見ると、
きれいに切り揃えられた茅葺の庇が、
額となり、
一幅の絵を作っている、
時間の止まった、
冬枯れの武蔵野、