京都・静岡・宝塚・東京・横浜、
そして尾張名古屋からの季節だより
御殿場YMCA東山荘、
夕間暮れになると、
ヒグラシの声が、
寄せては返す波の音となる、
あちらかと思うと、
こちらから、
急に反対の方角から、
声の変化の中に埋もれる、
姿は見えない、
まさに、
「空蝉の声聞くからに物ぞ思ふ」
そのヒグラシの、
穴より出でた姿に、
始めて出会う、
在り難き機会に出会う、
深夜、
翌日早朝、
夜が明け始めると、
ヒグラシはしっかと飛び立っていた、
空蝉ばかりが残る、
目を上げると、
緑の野原にキャビンが目覚める、
広大な緑の中に一輪、
続く土手の石垣に、
若きシダ、
ギボシも蕾を揺らしながら、
朝を告げる、
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「キツネノカミソリ」、
まさに開かんと、
その芽が時を待つ、
名の知らない花が一輪、
辺りにヒルガオが広がる、
東山荘の一日が始まる、
アオサギがすべてを見つめる、
山に登ると、
打って変わって、
曇天の空、
さらに雲谷がかかり、
森は湿潤となる、
御殿場は意外なほどの湿気、
灰色の建物が森から顔を覗かす、
辺りもまた灰色、
径を谷に降りると、
窪地は穏やかな薄日、
温泉、
別天地のように百合が咲く、
君子蘭が場違いにある、
不思議な処、
森眠る、
森目覚める、
湖光り、
天空映す、
アオサギ、
微動せず、
木々の向こう、
雲の奥に太陽、
ランドマーク、
紅葉の巨木は泰然、
シダ元気、
丘に登る、
富士現る、
絵画一幅、
蝉、
生きる、