“赤提灯”の温もり…アカザ
水温む春の川遊びの最中、十センチくらいの赤い色をしたナマズのような「アカザ」という魚に出会うことがあります。素手でつかむと「チ クッ」とやられてしまいます。
そうです、背ビレと胸ビレのトゲに毒腺があり、刺されると痛みま す。海のハオコゼなどより痛さは軽いですが、最初は「何事か」と驚か されます。
でも、表情がとても愛くるしく、各地に方言名が多いのは、人と長年接してきた魚である証しかも。
そんな方言の中で変わった呼び名が、高野山方面の「ムカイノカンヌ シ」です。ムカイは向火(しかめ面)、気むつかしそうなお顔の神主さん、ということでしょうか。ほかに兵庫県でアカネコ(赤猫)など。面 白いのが九州方面の「アカチョウチン」。
川底で、ほんのり赤い色を 放っているところが、夜道で見つけた、飲み屋の赤提灯そっくり。出 会ってホッとする安心感がなんだかよく似ています。うまいネーミングですね。
(八木禧昌・イラストも)