「立ち入り禁止区域」の指定について(1)
(以下については全て報告書より転写しました。)
はじめに
本報告書は、大阪市が管理する港湾施設のうち、「防波堤」「波除堤」「護岸」及び「廃棄物埋立護岸」(以下総称して「防波堤等」という。)に係る、大阪市港湾施設条例(以下「条例」という)。第10条第1項第4号に係る立入禁止区域の指定につき、「港湾施設の立入禁止区域の指定に係る検討会」(平成21年1月29日に設置。以下「本検討会」という。)による検討結果をとりまとめたものである。
これらの防波堤等は、港内の平穏や陸地の保全を目的に設置された施設であるため、一般の市民が立ち入ることを想定していない。このため、コスモスクエア海浜緑地や舞洲シーサイドプロムナードのような安全対策は基本的に講じられていない。
大阪市は、これまで、施設設置者としての管理権に基づき、防波堤等を関係者以外立入禁止とし、危険な箇所には立入禁止表示や侵入防止柵の設置等を行ってきた。しかし、多くの防波堤等において、侵入防止柵を乗り越え、あるいは渡船を利用するなどして、釣り人が立ち入っているのが現状であり、特に、野鳥園周辺では、釣り人が残したごみによって、野鳥への被害が出ているなど、環境保全上も大きな問題となっていた。
さらに、平成19年8月には、防波堤等で釣りをしていた釣り人が転落し、死亡するという事故も発生した。
そこで、大阪市が、防波堤等を条例に基づく立入禁止区域に指定する案を作成し、平成20年8月から1ヵ月間にわたる意見公募を行ったところ、「釣りの意義、釣り継続の要望を主張するもの」や「自己責任を主張するもの」、「一定のルールを決めて認めて欲しいと主張するもの」、「釣り人のマナーの問題を主張するもの」など、市民から1,300件を超える多様な意見が寄せられた。
本検討会は、このような経緯を経て、平成21年1月29日に、立入禁止区域の指定について検討するために設置され、関係者からの意見聴取、施設の管理瑕疵にかかる判例の調査、釣り場としての安全性の基準の確認、釣り人のマナーの問題などについて検討を重ねてきた。その検討結果を以下において報告する。
1.検討にあたっての基本的な考え方
本検討会は、施設管理者である大阪市の「港湾作業、荷役に支障を及ぼす場所については立入禁止が不可欠である。」、「防波堤等については『通常有すべき安全性』が何らかの形で実現されないと開放はできない。」といった主張や、先述の意見公募で市民から寄せられた多様な意見を参考に、以下のような視点から防波堤等に係る立入り禁止区域の指定のあり方について検討することにした。
(1)行政目的等への影響
防波堤等への一般の市民の立ち入りを可能とする場合、港湾施設やその背後地に立地する事業者が行なう港湾事業、また、背後地の他の行政目的に支障が生じないことが不可欠の条件となる。
(2)安全性の確保
当該の施設について「通常有すべき安全性」が確保されている必要がある。
(3)利用者によるマナーの遵守、安全対策
ごみの放置や迷惑駐車を防止するため、利用者のマナーの遵守を確保することが不可欠である。また、釣り人のライフジャケット着用の徹底など、自己責任に基づく安全確保のためのルール設定が必要である。
(4)費用負担
防波堤等への市民の立ち入りを可能とするための安全対策によって費用が発生する場合は、受益者負担について検討する必要がある。
2.立入禁止区域の指定に関する考え方
(1)総論
(1)すべての市民への開放について
防波堤等を一般市民に開放する場合については、海に直接面した箇所であることから、気象条件によって、高波や強風などの海象の強い影響を受けることは言うまでもなく、天候に関わらず、海面までの高さが高いことから、転落すると容易によじのぼることができない構造となっているため、施設管理者としては、転落防止柵の設置や足場の改良など、ハード面における安全対策を実施し、「通常有すべき安全性を確保」することが不可欠である。
しかし、これには、莫大な費用が必要となる試算が施設管理者である大阪市から示されており、現実の実施は困難であると考えられる。このため、これらの施設については、コスモスクエア海浜緑地や舞洲シーサイドプロムナードのようにすべての市民を対象として開放することは、不可能である。
なお、一般の市民に開放された安全な魚釣り場としては、過日、実施された舞洲シーサイドプロムナードにおける魚釣り社会実験の検証結果を踏まえ、現在供用中の緑地の一部、あるいは、現在工事中の緑地の一部について、今後、開放することで別途検討を進められたい。
(2)釣人に限定した立ち入りについて
本検討会による現地調査、関係者からの意見聴取などから、防波堤等への立ち入りは、事実上釣り人に限定されていると考えられる。
防波堤等で釣りを行う際の危険性を釣り人が十分認識していることを考慮すれば、「通常有すべき安全性の確保」は、必ずしも転落防止柵の設置や足場の改良などといったハード面の対策のみで確保されなくても、これに代わるものとして、釣り人が、ライフジャケット着用等のソフト面における安全対策を一定の水準以上に行うことを前提に、施設管理者が万一の転落事故に備えた救命設備の設置を行なうなど、最低限の安全対策を実施する場合は、条例の規制をもって立ち入りを制限しないことも可能である。
ただし、この考え方は、あくまでも、すべての市民ではなく、危険性を十分認識した釣り人のみが立ち入ることを前提としたものであり、かつ、釣り人の側のソフト的安全対策と施設管理者による必要最低限の安全対策との組み合わせが不可欠であることに留意されたい。
また、釣り人の側の安全対策を担保するために、渡船利用者に対しては渡船事業者から周知徹底し、また、陸地からの利用者には、立ち入る際にその場所が危険であるということを十分に認識できるようにする工夫が必要である。また、釣りの健全な振興を図る釣り団体等による啓発活動も重要である。
明日は具体的な考え方やマナーについての事を載せます。