「おんどら、おんどら、どこ見て走っとんじゃ。ちゃんと、はしっこ走らんかい!!!」
なんとも、品の悪い言葉で始めてしまいました。これは忘れもしません。私がまだうら若い女子高生のころの話です。自転車で下校中、なんと前に住むおっさんに、このように怒鳴られたのでした。
「おんどら」というのは「おのれ」と同じ意味で、『日本国語大辞典』第2版の「おのれ」の項目によると、感動詞としての使い方があり、「相手に激して強く呼びかける時のことば。下略」と説明してあります。つまり、私はおっさんに激されて(?)2回も強く呼びかけられたのです。この用法は古く、『今昔物語』にも見られるようです。
ちなみに、「おんどら」というのは、先述の辞書の方言欄によると、「兵庫県」で用いられ、似た語形の「おんどれ」は、福井県、滋賀県大津市、大阪市、中河内郡、兵庫県加古郡、奈良県南大和、和歌山県新宮、山口県大島などで使われるようです。
しかし、いくら古い用法だとしても、このように怒鳴られた私は、気が悪くて悪くて、その後、前に住むおっさんに挨拶をしなくなったのは言うまでもありません・・・・。