安倍首相のスローガンが「美しい国日本を作る」であることや、自身の政権を「美しい国づくり内閣」と命名したのは、皆さんもよくご存知のことです。
ところで、似た言葉に「きれい」がありますが、「美しい」と「きれい」は何が違うんでしょう。まず、品詞が違います。「美しい」は形容詞(イ形容詞)ですが、「きれい」は「きれいだ」の語幹ですから、形容動詞(ナ形容詞)です。(したがって、「きれかった」「きれくない」というのは文法的に間違っています。)
次に意味ですが、どちらも*「姿・形・色・音などが、整っていて鮮やかで快く感じられるようなさま」という意味です。では、何が違うのでしょう。次の例を見てみましょう。
? きれいな友情、きれいな行為
〇 美しい友情、美しい行為
? 美しく手を洗う、美しく忘れる
〇 きれいに手を洗う、きれいに忘れる
つまり、「きれい」は、汚れていなくて清潔なさま、残りの全くないさまにも遣われます。具体的ですね。それに対して、「美しい」は、人の行為や態度にも遣われますが、かなり抽象的ですね。雰囲気はわかりますが、具体的に何を言っているのかはわかりにくいです。
話は戻りますが、「美しい国」というのはイメージ優先で具体的ではありません。それを意識しているのかどうかはわかりませんが、ある地下鉄構内でこのようなポスターを見つけました。
「きれいな国・日本へ!!」
これは、「美化推進条例」制定10周年のポスターです。ゴミなどのない、清潔な町にしようということですね。はい、非常にわかりやすいです。
参考文献 『使い方の分かる類語例解辞典』(1994)小学館