おはようございます。 生き生き箕面通信1573(130413)をお届けします。
・「オレは最大限の後ろ倒し。オマエは最大限の前倒し」と、アメリカさまのTPP
アメリカさまが、やりたい放題です。アメリカさまにしてみれば、「よくぞTPP」というところでしょうか。TPP(環太平洋経済連携協定)という錦の御旗を見つけたればこそ、「そこのけ、そこのけ、おん馬が通る」と、米国1%族の要求をムリ押しできるのです。
事実、アメリカ政府は昨日4月12日までに合意した中では、自国の自動車業界の要求通り関税撤廃は「最大限の後ろ倒し」を日本政府に飲ませました。また、アメリカ政府は自国の保険業界の要求通り、「日本のかんぽ生保の新規事業凍結」を日本政府に飲ませました。これが、TPPに参加させてもらうための事前交渉段階での実態です。事前交渉で日本政府が得たものはゼロ。一方的に屈服させられたのです。
もともと韓国がアメリカとFTA(自由貿易協定)を結んだため、韓国のアメリカ向け輸出の関税が下がり、「自動車輸出でも韓国に負ける。だから、TPPに参加し、関税を下げてもらわなければならない」というのが、日本政府の説明でした。ところが、何のことはない。肝心の自動車の関税は、アメリカは「最大限後ろ倒しできる」のです。
かんぽの新規事業ストップも、その凍結期間内にアメリカの保険業界が美味しいところをすべていただけるという仕掛けです。
アメリカ側は、事前交渉の段階で、本来なら本交渉で進めるべき重要事項をあっさりと手に入れました。「なんとかして参加したい」という安倍政権の足元を見透かして、大成果を挙げたのです。これがアメリカ流のやり方です。取れるものはすかさず取る。譲りたくない案件は、できるだけ先送りする。
これに対する大手紙の本日の論評はどうだったか――。
まず、読売新聞。社説で「7月にも日本政府が交渉のテーブルに着くめどがついたことを歓迎したい」と、例によって政府寄りの論説を掲げ、大政翼賛紙の面目躍如です。
さらに、「なにより大事なのは、自由貿易の拡大でアジアなどの活力を取り込み、日本の成長に弾みをつけることだ」と強調しました。ところが、おっとどっこい、アジアの成長勢力である中国と韓国は、TPPには参加していません。日本はこの両国とは、別に「日中韓3国FTA」の交渉を進めています。5月には、東アジア全体の枠組み作り交渉も始まります。何もTPP参加をあせることはまったくありません。
また、「残された時間は少なく、日本の参加が遅れれば遅れるほど、通称ルール作りに関与できる余地が狭まる」と指摘しました。しかし、事前交渉ですら完敗してしまったいきさつの検証はせずに、交渉のテーブルにつけば何か成果が得られるかのよう社説は、幻想をふりまくだけで有害です。
他方、朝日新聞社説は、「早くもアメリカペースになっている」と指摘。「大事なのは、国民全体にとっての利益である」と、注文をつけています。それはその通りでしょう。しかし、結びが、「いよいよ、政府の力量が問われる局面を迎える」としたのは、ありきたりの常套文句でお茶をにごすいい加減な論説という結果になりました。
かくして、アメリカさまのTPPは、しずしずと進んでいくようです。日本の私たちは、道路わきに平伏して「TPP行列」を見送るほかないのでしょうか。