おはようございます。
生き生き箕面通信1187(10309)をお届けします。
・原発再稼働へ前のめりの野田政権――命より経済優先
野田首相は原発再稼働へ準備を着々と進めています。ストレステスト
の結果が出ると、枝野経産相、細野環境相、藤村官房長官の関係3閣僚
を集め、直ちに「再稼働ゴー」を決める。従来は、地元の判断を待つ姿勢
でしたが、それでは結論が出るのが遅れると見、できるだけ早く再稼働
させるには「政府が前に出る必要がある」と前のめりの判断をしました。
前のめりの姿勢に転換したのは、原発を動かさなければ経済に悪影響
が出る恐れがあるとの判断からです。原発を動かさなければ電力供給が
不安定になり、企業の生産計画に支障が出る。火力発電に頼り続けると、
燃料の原油や天然ガスが高騰しているため電気料金が高くなり、生産
コストが高くなる。また原油輸入代金がかさむと貿易収支の赤字が定着
して、日本経済そのものの先行きに赤信号が点滅する。
経済はもちろん大切です。だからといって、全てに経済が優先すべきで
しょうか。命より優先すべきでしょうか。
「3・11」から1年の節目を目の前にして、私たちは今回の原発事故が
起きた真の原因を改めて考えてみましょう。そもそも原発を日本に導入
したのは、安定したエネルギーを確保することが日本経済の復興・発展
に欠かせないという判断からでした。正力松太郎、中曽根康弘氏らが
導入の旗を振り、田中角栄首相(当時)が「原発立地3法」を成立すること
で過疎地への原発立地を札束でほっぺたを張るようにして一気に進め
たのでした。ここにあったのは、「すべては経済のため」という思想です。
この経済優先思想は、「カネと引き換えに魂を売る」行為でした。1960年
の「60年安保」後、当時の池田勇人首相が「所得倍増政策」を打ち出して
以来、日本人は「エコノミック・アニマル」の道をひた走ることになりました。
すべてにカネが優先することになり、原発の安全性も「コストがかかり
過ぎる」という理由で隅に追いやられました。決して「想定外」ではな
かったのです。想定はされたけれど、「コストがかかる」という経済的
理由で「安全」を犠牲にしてきたのです。
経済を優先するという「文化」が日本のメイン・ストリームになりました。
例えば、東大原子力工学の博士号を持つえらい先生方も、学問を研究
して得られた科学的知見をあっさり売り渡し、東電の走狗、曲学阿世に
成り下がりました。そしていま、野田政権の「原発再稼働へ前のめり」を
後押ししています。原発事故の真の原因は、経済優先の思想だったと
いえます。
福島原発4号炉の核燃料プールは爆発後に残った残骸に支えられて
いるにすぎません。いつまた、地震や台風で壊れるか分からない。まず
フクシマの対策が先のはずです。にもかかわらず、ストレステストという
インチキくさい基準を持ってきて、これが「OK」なら、再稼働も「OK」にす
るそうです。そして、再び原発事故が起きた時、「日本は世界の人のた
めに放射能の動物実験、モルモットになっているのだ」と胸を張るので
しょうか。
原子力発電について考える場合、日本の中の「経済優先思想」という
文化そのものを再検討するところからやり直す必要があるはずです。
いま私たちが問われているのは、21世紀以降の1000年をどうして生き
延びるかという人類の生存問題です。目の前の電力のために、生存そ
のものを賭けてもいいのか、という問題ではないでしょうか。