カルテ番号 ゆ・1（23）
弓削は院長の言葉から、何かが閃きつつあった。
「我々人間は大切なモノを創りだせない・・・
破壊する事はできる・・・
創りだせないが、生命は備わっている・・・
備わっているが、時限付き・・・
病になるよりも、回復する方が簡単・・・
創りだせないが、回復はできる・・・」
院長は弓削の言葉を黙って聞いていた。
弓削は今までの研究で解明ばかり追っていた。
だが研究者には解明以外の道がある、と閃きつつあった。
弓削の専門は地震学だ。
解明と予知以外での道・・・
もう少し、この院長の言葉を聞きたい。
弓削は今日、何しに来たのか、すっかりと忘れていた。
「先生、人は何故、生きているのでしょう？」
院長は静かに笑った。
「それはまた、いきなり、大きなテーマですね。
私は哲学者でも教祖でもありません。
それに、哲学者や教祖も人間ですね。
人間が答えられる質問ではないと思います。
例えば、微生物に向かって、お前は何故いるのか？と」
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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