人を引き付ける国インドでの奇跡のような実話に驚きました。
主人公PKは「不可触民」に属しています。「けがれの民」と言われ、インドのカースト制の最下層に位置します。大英帝国から独立し、法制度でも平等としながらも、歴史は動かず、学校ではイジメの範疇は超越し、同じ人と考えられないふるまいを受けます。子どもの頃からの絵描きの才を伸ばし、ニューデリーの美術学校で学び、町の中心部のコンノート・プレイスで肖像画を描くことで生活費に回していました。ここには西欧からヒッピーが旅に訪れ、PKは多くの友を作ります。その中の一人が、スウェーデンのロッタという女性。彼女と恋に落ち、スウェーデンに帰国した彼女に恋焦がれ、お金がないために自転車でスウェーデンまでの旅に出ます。
この本の解説を読むと、インドからヨーロッパへ行ける、本当に極めて希少なタイミングでした。ソ連のアフガニスタン侵攻、イランのイスラム革命はその後に起きました。
人との出会いの絶景さ、凄まじい犠牲を払える愛の力の素晴らしさに感動せずにはいられません。PKのおじいさんの言葉、「我々は愛から生まれ、愛に戻っていく。これが人生の意味なんだ」はまさに箴言です。
『愛の自転車 インドからスウェーデンまで最愛の人を追いかけた真実の物語』(ペール・J・アンデション 著、徳間書店)