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アメリカの鏡・日本 完全版

2016-01-21 17:53:42 | 

 

「占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むことはできない」

とマッカーサーが邦訳を禁じただけあって、日本の戦争責任に対してはアメリカにも原因を有していると述べられている本書では、歴史における列強の行動は同じ穴のムジナ以外の何ものでもないということです。

  幕末、アメリカは自国の戦略のために日本を開国させ、日本に対し近代国家への道を開きました。欧米列強諸国が先生役となり、日本は生徒として、欧米型国家になることを選択し、中央集権的経済体制を取りました。当時の欧米列強はこれを歓迎し、文明の後れた韓国と中国に西洋文明の恩恵をもたらす国・日本を必要としました。

 イギリスとロシアの極東でのパワーバランスの中で、ロシアの極東ならびに中国でのパワーをダウンさせ、イギリスは自国の権益を守るために、韓国の独立のためという名目で、イギリスは日本に戦争をさせました。不平等条約の破棄し、日清戦争、そして、日露戦争で日本は勝利し、「世界国家」となりました。

  日本が欧米から学んだパワーポリティクスの実践を行う中で、「日本は人道主義、機会均等、人種の平等は、国際法のルール同様、『法的擬制』にすぎないことに気付」き、「国際関係のルールとは、実は、暴力と貪欲を合法化にしたようなもの」と著者は見ています。建前と本音は全く違います。「西洋人に許されるのなら、日本人にだって許される」と考えられます。

  帝国主義列強は自国の権益を守ることが第一であり、日本の中国での行動を良しとせず、欧米帝国主義国家と同じことを日本がしたことに「凶暴で貪欲」というレッテルを貼って批判し、人種的な差別感もあり、日本人は「世界で最も軍国主義的な国民」だから、徹底的に打ち壊すのが太平洋戦争だったとしています。

 この本の論調は、パワーポリティクスの衝突のために、日本を近代国家にし、「西洋文明の教えを守らなかったことではなく、よく守った」日本という生徒を先生が許さなかった構図です。この考えは非常にフラットな見解であり、自虐的な歴史を学ばされた日本人も一読する価値があります。

『アメリカの鏡・日本 完全版』(ヘレン・ミアーズ著、伊藤延司訳、角川文庫、本体価格1,200円)

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